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WSET Level 3とワインエキスパートの違いを徹底比較!学習内容・問題形式の違いとは?

WSET Level 3とワインエキスパート試験は、ワインに関する知識とスキルを評価する資格試験ですが、その内容や試験形式には明確な違いがあります。以下に、両者の学習内容、筆記試験、テイスティング試験、そして国際性と日本国内での認知度の違いについて詳しく比較します。

つまりどう違うの?

WSET Level 3

  • 世界中のワイン産地や気候、ブドウ品種、醸造方法について、「なぜこのワインがこうなるのか?」という背景を重視して学びます。
  • テイスティングは、標準化された「SAT」方式(Systematic Approach to Tasting)を採用し、「再現可能なレベルの客観的なテイスティング方法」を学びます。

ワインエキスパート試験

  • 世界中のワインの産地、地域、原産地呼称で「どのようなワインが造られているのか」を重視して学びます。
  • テイスティングは、そのワインの香りや味わいを「お客様にわかりやすく説明する」ことを重視して、多様な表現を学びます。

どうしてこのような違いが生まれたのでしょうか?WSET Level 3とワインエキスパート試験の違いが生まれた背景には、それぞれの資格が誕生した目的の違いがあります。

WSETは1969年にイギリスで設立され、ワインを含むアルコール飲料を「流通から見た評価」という観点で教育を始めました。そのため、世界中のワイン産地や気候、ブドウ品種、醸造方法を公平に学び、ワインの特性を「なぜこのワインがこうなるのか」という背景や理論で理解することに重点を置いています。対象は生産、流通、小売、サービスなどワイン業界全体に広がり、さらに国際市場で通用するスキルを提供するため、標準化されたテイスティング方法(SAT)を採用しています。この標準化により、どの国でも一貫した評価が可能になり、グローバルなキャリアに繋がる資格となっています。

一方、日本ソムリエ協会が主催するワインエキスパート試験は、日本市場におけるワインの普及と文化の向上を目的として誕生しました。当初は飲食業界向けの「ソムリエ資格」が中心でしたが、後に一般の愛飲家や流通業界にも対応するため、「ワインエキスパート資格」が設けられました。この資格では、ワインの産地や原産地呼称に関する知識を学ぶだけでなく、そのワインをお客様にどのように説明するかという表現力や実務能力を重視しています。特にテイスティングでは、香りや味わいを多彩な表現で伝えるスキルが求められ、飲食業や小売業の現場で即戦力として役立つ内容になっています。

このように、WSETは国際的で理論的な理解を重視し、ワインエキスパート試験は日本の飲食文化に特化して実践的なスキルを磨く資格として、それぞれの目的に応じた独自の方向性を持つようになったのです。

具体的な筆記問題の違い

ここからは、WSET Level 3とワインエキスパート試験の具体的な問題形式や内容の違いを比較していきます。それぞれの試験が評価するポイントや重視するスキルが、出題される問題にどのように反映されているのかを確認していきましょう。

WSET Level 3の筆記試験

WSET Level 3では、記述式問題が筆記試験の中心です。この形式では、ワインの特性や背景にある要因を分析的に説明する力が求められます。記述内容には論理性と専門性が必要とされ、単なる暗記ではなく、理解した知識を活用する力が試されます。

問題例:

以下は、実際にWSETの教科書にサンプルとして載っている問題です。

「ブルゴーニュ地方の冷涼な気候がシャルドネのスタイルや品質にどのように影響を与えるか説明しなさい。」

このように、ワインの生産地域の気候条件をワインの特性に関連付けることが求められます。気候が冷涼であるため、ぶどうのリンゴ酸の代謝が鈍り、ぶどうの酸味が損なわれず、果実と酸のバランスが取れる、などと、論理的にワインのスタイルを説明する能力が問われます。

ワインエキスパートの筆記試験

問題例:

以下は、ワインエキスパート試験の問題形式に即した例です。

「次の中から、ブルゴーニュ地方のAOCワイン『マルサネ』が生産することができるワインの種類を選択してください。」

  • A) 赤、白
  • B) 赤のみ
  • C) ロゼのみ
  • D) 赤、白、ロゼ

この問題では、ブルゴーニュ地方のAOCワインに関する詳細な知識が求められます。正解は「D) Red, white, and rosé wine」です。マルサネはブルゴーニュで唯一、赤・白・ロゼの全てを生産できるAOCとして知られています。ワインの生産地の細かい規則まで覚える必要があります。

また、地域の伝統料理や文化との関連性を問う問題も出題されます。

「次の中から、イタリアのピエモンテ地方の伝統料理を選んでください。」

  • A) Risotto alla Milanese
  • B) Bagna Cauda
  • C) Osso Buco
  • D) Ribollita

今回の問題の正解は「B) Bagna Cauda」。ピエモンテ地方の代表的な料理で、アンチョビとニンニクをベースにしたソースを温め、野菜をディップして食べる料理です。他の選択肢は別のイタリアの地方料理です。このように、ワインの有名生産地の郷土料理に関する幅広い知識も求められます。

WSET Level 3とワインエキスパート試験の筆記試験では、出題形式や求められるスキルに明確な違いがあります。WSET Level 3は記述式問題を中心とし、ワインの特性を背景知識や理論に基づいて論理的に説明する能力が問われます。一方、ワインエキスパート試験は4択形式を主とし、地域の規定や伝統料理など、実務に即した細かい知識が求められます。これにより、それぞれの試験は学術的な理解と実践的なスキルという異なる側面を評価しています。

テイスティング試験の違い

WSET Level 3とワインエキスパート試験のテイスティング試験も、アプローチや目的が大きく異なります。それぞれが評価するポイントを以下に説明します。

WSET Level 3のテイスティング

香り:
WSETでは香りを「第一アロマ」「第二アロマ」「第三アロマ」に分類し、それぞれのカテゴリに基づいて香りを選びます。選択肢に「ブルーベリー」「腐葉土」「バニラ」などの香りの表現要素はありますが、そのワインから感じられるアロマに含まれる選択肢を選べば、何を選んでいても正解になります。赤ワインで第一アロマがすれば、「ラズベリー」でも「イチゴ」でも正解ということです。香りの解釈に主観的な偏りが少なくなる設計で、再現性の高い評価が可能です。

味わい:
味わいは「酸味」「タンニン」「ボディ」などを5段階の強弱で評価します。たとえば、酸味が「Medium(中程度)」、タンニンが「High(高い)」といった具合に、数値化することで客観性を重視しています。

結論:
WSETでは、ワインの熟成可能性、価格帯についても言及します。逆にWSET Level 3では、ブドウ品種や生産地を答える必要がありません。これにより、テイスティングが単なる感覚的な評価ではなく、マーケットを考慮した実務的なスキルとして活用されます。

WSETは「流通から見た評価」を目的に始まった資格であるため、国際市場で一貫性を持ってワインを評価できるスキルが求められています。標準化された「SAT(Systematic Approach to Tasting)」方式により、異なる国や文化圏でも再現性のあるテイスティングを可能にしています。この標準化が、WSETの国際的な信頼を支えています。

ワインエキスパートのテイスティング

香り:
香りについては「ナツメグ」「石灰」「白バラ」などの香りの選択肢から、そのワインの香りにふさわしいものを的確に選ぶ形式です。ボジョレー・ヌーヴォーの香りは、「ラズベリー」ではなく「イチゴ」を選ばないといけない、などです。香りの質や表現が重視され、ワインの特徴をお客様に伝えるためのスキルが試されます。

味わい:
味わいの評価では、強弱だけでなく、酸やタンニンの質などの質的な評価も求められます。具体的には、酸味の場合だと「なめらかな」酸なのか「溌剌とした」酸なのかを見分けないといけません。これにより、単なる数値的な評価にとどまらず、より深い理解と表現力が必要です。

結論:
「ポテンシャルがある」「成熟度が高く豊か」などワイン全体を端的に評価するコメントや、デカンタージュが必要かどうか、提供温度などが問われます。この総合評価では、ワインのサービス現場を想定したコメントが重要となります。

ワインエキスパート試験は、日本市場や飲食業界における即戦力を育成することを目的としています。そのため、香りや味わいの評価では、販売や接客の場で必要となる「表現力」と「サービス的な判断」が重視されています。香りや味わいの質的な評価やサービスの要素が試験に含まれているのは、この実務重視の背景によるものです。

まとめ

WSET Level 3とワインエキスパート試験は、それぞれの目的と背景に基づいて、異なるアプローチでワインの知識とスキルを評価しています。

  • WSET Level 3は、ワインを理論的に理解し、国際市場で一貫性のある評価を行うスキルを重視します。標準化された「SAT(Systematic Approach to Tasting)」方式による客観的なテイスティングや、熟成可能性や価格の分析を含む実務的なスキルが特徴です。
  • 一方、ワインエキスパート試験は、日本市場に特化し、実務的な場で役立つ表現力やサービススキルを重視します。香りや味わいの質的な評価、適切な表現力、提供方法の判断力が問われ、接客や販売の即戦力を養成する内容となっています。

どちらの試験も、受験者の目的やキャリアプランに合わせて選ぶべき価値ある資格です。

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