酒類飲料概論 – ブランデー | ソムリエ試験教本まとめ
※本サイトには記事内にプロモーションが含まれています。視覚的に学習しやすくするよう商品名やワイン名にamazonリンクを貼っています。
このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
ブランデーとは
ブランデーは、果実や果実酒(果実酒かすを含む)を原料として蒸留して作られる酒です。日本の酒税法では、蒸留時のアルコール分が95度未満であることが条件です。また、果実酒にオーク材を浸して蒸留したものや、アルコール・スピリッツ・香味料・水を加えたものもブランデーとみなされます。
ブランデーの多くはブドウを原料とする「グレープブランデー」で、他にもリンゴ、サクランボ、洋梨などの果実が用いられます。また、ワインやその搾りかすを原料にすることもあります。
フランス語では「Eau-de-vie」(命の水)と呼ばれ、原料に応じて次のように分類されます:
- オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン:ワインを蒸留したもの。
- オー・ド・ヴィー・ド・マール:果実酒かすを蒸留したもの。
- オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ:ブドウ以外の果実を蒸留したもの。
特定の果実名を付けて呼ばれる場合もあり、例えば洋梨の「オー・ド・ヴィー・ド・ポワール」やサクランボの「オー・ド・ヴィー・ド・スリーズ」があります。フルーツブランデーは、果実を発酵後に蒸留する方法(Wasser)と、果実を浸して蒸留する方法(Geist)があり、ドイツ語で区別されています。
ブランデーの製造方法
代表的なグレープブランデーの製造工程は次の通りです:
- 発酵:ブドウを発酵させてワインを造ります。酸度の高いブドウが使用され、有害微生物を抑制します。
- 蒸留:単式蒸留を2回行う方法が一般的です。コニャックでは「シャラント型蒸留器」を使用。
- 熟成:オーク樽で熟成させ、香味や色合いを引き出します。
- 瓶詰め:最低アルコール度40度で販売されます。
世界の主なブランデー
1. グレープ・ブランデー
- コニャック(フランス):世界販売量の98%が輸出。主にアメリカ市場では若い「VS」クラス、アジアでは熟成が進んだ「V.S.O.P.」以上が人気。
- アルマニャック(フランス):単年度収穫のブドウを使用し、ヴィンテージ製品も多い。
- その他:スペイン、イタリア、アメリカなどでも生産。南米の「ピスコ」も地理的表示として保護されています。
コニャック
コニャックは、フランス西部のコニャック地方で生産されるグレープブランデーで、A.O.C.(原産地統制呼称)により厳しく管理されています。主要品種としてユニ・ブランを使用し、シャラント型蒸留器による2回の単式蒸留が特徴です。
主な特徴
- 生産地域:グランド・シャンパーニュ、プティット・シャンパーニュ、ボルドリー、ファン・ボワ、ボン・ボワ、ボワ・オルディネールの6地区に分類。
- 土壌の特徴:特にグランド・シャンパーニュは石灰岩が多く含まれる土壌で、繊細で力強く長い余韻のあるコニャックが生まれます。
- 熟成:リムーザンやトロンセ産のオーク樽で最低2年間熟成が必要。高級品では数十年熟成することもあります。
製造工程
- 発酵:酸度の高いブドウを使用し、品質を保持。
- 蒸留:シャラント型蒸留器で2回蒸留。蒸留後はアルコール度数72.4度以下の無色透明な液体になります。
- 熟成:オーク樽で熟成し、コニャック特有の香りと色合いを引き出します。
業界構造と市場
- 生産者:約4,300のブドウ栽培農家があり、うち3,600がシャラント型蒸留機を持つ小規模蒸留農家。
- 輸出:世界販売量の98%が輸出されており、主要市場はアメリカ(全体の51%)とアジア(28%)。
- 消費傾向:アメリカでは「VS」クラスが人気でカクテルに使用される一方、中国では「V.S.O.P.」以上の熟成品が好まれ、ストレートで楽しまれます。
アルマニャック
アルマニャックは、フランス南西部のジェール県、ランド県、ロット・エ・ガロンヌ県で生産されるグレープブランデーで、最古の蒸留酒とされています。主に連続式蒸留を行い、ヴィンテージ製品が多いことが特徴です。
主な特徴
- 生産地域:バ・ザルマニャック、アルマニャック・テナレーズ、オー・アルマニャックの3地区に分類されます。
- 土壌:砂質が多いバ・ザルマニャックは最高品質で、フィネスと芳香性が高いブランデーを生産。
- 品種:ユニ・ブラン、フォル・ブランシュ、バコ・ブランが主に使用されます。
製造工程
- 発酵:白ワインを発酵させ、酸味と香りを重視したブランデーを造ります。
- 蒸留:伝統的なアルマニャック型連続式蒸留機を使用。1972年以降は単式蒸留も許可されています。
- 熟成:ガスコーニュ地方産のオーク樽で熟成し、収穫翌年から1年以上熟成が必要。
ヴィンテージ製品
アルマニャックは単一年度に収穫されたブドウのみを使用して製造され、その収穫年を表示することが特徴です。最低10年以上熟成したものが多く、高い希少性と品質が魅力です。
ブドウの搾りかすを原料としたブランデー
ブドウの搾りかすを発酵・蒸留して作られるブランデーは、ワイン生産国で広く生産されています。代表的な例としてフランスの「マール」とイタリアの「グラッパ」があります。
1. マール(Marc, フランス)
「マール」はブドウの搾りかす(果皮・種など)を発酵・蒸留して得られるオー・ド・ヴィーで、フランス各地で生産されています。
- 製造工程:搾りかすを一定期間密閉容器で保存し、蒸気加熱などで蒸留を行います。直火での加熱は少なく、巡回蒸留業者による蒸留も一般的です。
- 熟成:木樽で熟成させ、香りとまろやかさを引き出します。
- 主な種類:
- マール・ダルザス・ゲヴュルトラミネール(Marc d'Alsace Gewürztraminer, A.O.C.)
- マール・ド・ブルゴーニュ(Marc de Bourgogne, A.O.C.)
- マール・デュ・ジュラ(Marc du Jura, A.O.C.)
- マール・ド・シャンパーニュ(Marc de Champagne)
- マール・ド・プロヴァンス(Marc de Provence)など。
- アルコール度数:多くは40度以上。一部の地域では45度以上の規定があります。
2. グラッパ(Grappa, イタリア)
イタリアで生産される「グラッパ」は、ブドウの搾りかすを原料とする蒸留酒で、主に熟成せず無色透明のまま瓶詰めされることが多いですが、近年では樽熟成の人気が高まっています。
- 地理的表示(I.G.):地域ごとに特徴的な製品があります。
- グラッパ・ディ・バローロ(Grappa di Barolo)
- グラッパ・フリウラーナ(Grappa Friulana)
- グラッパ・シチリアーナ(Grappa Siciliana)など。
- アルコール度数:通常40~45度。
リンゴを原料としたアップルブランデー
リンゴを発酵させた「シードル」を蒸留して作られるブランデーは、主にフランス北部やイギリス、アメリカで生産されます。フランスでは「カルヴァドス」が代表的です。
カルヴァドス(Calvados, フランス)
- 主な生産地域:カルヴァドス、オルヌ、ユール、セーヌ・マリティームなど。
- 原料品種:230種以上のリンゴと121種の洋梨が使用可能で、地域ごとに認可された品種が異なります。
- 蒸留方法:単式蒸留と連続式蒸留の両方が使用され、アルコール度数72度以下で蒸留します。
- 熟成:リムーザンやトロンセ産のオーク樽で2年以上熟成。
- A.O.C.分類:
- カルヴァドス(Calvados)
- カルヴァドス・ペイ・ドージュ(Calvados Pays d’Auge)
- カルヴァドス・ドンフロンテ(Calvados Domfrontais)
サクランボを原料としたブランデー
サクランボを発酵・蒸留して作られるブランデーは、フランス東部やドイツで生産され、フランスでは「キルシュ」、ドイツでは「ヴァッサー」と呼ばれます。
- 蒸留方法:単式蒸留機を使用し、ニュートラルな容器で熟成されます。
- 主な産地:フランスの「キルシュ・ダルザス(Kirsch d’Alsace, I.G.)」など。
その他のフルーツを原料としたブランデー
ブドウやリンゴ以外のフルーツを使用したブランデーは、フランスでは「オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ」と呼ばれます。
- 主な原料:プラム(ミラベル、グエチェ)、モモ、コケモモ、アンズ、洋梨(ポワール・ウィリアムス)など。
- 生産地域:フランス、ドイツ、スイスなどの寒冷地が多く、フランスでは「ミラベル・ド・ロレーヌ(Mirabelle de Lorraine, A.O.C.)」や「フランボワーズ・ダルザス(Framboise d’Alsace, I.G.)」が代表例。
- 特徴:多くは無色透明で、高いアルコール度数を持ち、食後酒として楽しまれます。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。