酒類飲料概論 – 日本酒・焼酎 | ソムリエ試験教本まとめ
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このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
幅広い飲用温度とは?
日本酒は冷酒、常温、燗酒など、6℃から60℃と幅広い温度で楽しめます。この特性により、季節や飲む場面に応じた多彩な味わいを楽しめます。
- ぬる燗(約40℃): 甘味や旨味を感じやすい温度。
- 熱燗(50℃以上): 味わいのバランスを崩さない商品も開発されている。
- 冷酒: 生酒やシャーベット状の「みぞれ酒」など、新しいスタイルも登場。
四季折々の味わいと熟成とは?
日本酒は季節ごとに異なる味わいを楽しめる酒です。秋に収穫された米を仕込むことで、以下のような季節感を味わえます。
- 新酒(冬): 搾りたてのフレッシュな味わい。
- ひやおろし(秋): 夏を越して旨味を増した熟成酒。
- 梅雨時: 活性清酒の爽やかな飲み心地。
「ひやおろし」とは、新酒を春先に火入れ(加熱殺菌)した後、ひと夏を経て熟成させ、2度目の火入れを行わずに出荷する秋の酒です。
日本酒の多様性とは?
日本酒の味わいは、米、水、醸造技術、地域ごとのテロワールなど、多くの要因で変化します。
- 米: 山田錦や五百万石など、酒造好適米の品種。
- 水: 硬水(辛口酒)と軟水(まろやかな酒)の違い。
- 醸造技術: 並行複発酵や段仕込みなど。
うまみのもととは?
日本酒の旨味は、豊富なアミノ酸や有機酸などに由来します。アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸などが特に重要な成分です。
並行複発酵とは?
日本酒の醸造技術で、麹菌が米のでんぷんを糖化し、酵母が糖をアルコールに変える工程が同時に進む方法です。
- 糖化: 麹菌の酵素がでんぷんを糖に分解。
- 発酵: 酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに変換。
酒母とは?
酒母は「酒の母」とも呼ばれ、発酵を開始させる酵母を純粋に培養したものです。
原料米とは?
日本酒には、酒造りに適した「酒造好適米」が用いられます。この米は、粒が大きく、タンパク質含有量が少なく、麹菌が浸透しやすい特性を持ちます。
- 山田錦: 豊かな旨味を持つ最高級の酒米。
- 五百万石: 淡麗な味わいを生む寒冷地向けの米。
- 美山錦: 心白の発現率が高く、すっきりとした味を生む。
水の重要性とは?
日本酒の主成分の80%を占める水は、味わいに大きな影響を与えます。
- 硬水: 酵母の活動を活発化させ、辛口酒に適する。
- 軟水: 柔らかく、まろやかな酒質を生む。
製法品質表示基準とは
日本酒の商品表示に関する基準は1989年11月に国税庁によって制定され、「清酒の製法品質表示基準」として適用されています。その後も数回の改正(例: 2003年)を経て、現在も運用されています。この基準により、特定名称酒の表示基準や記載すべき事項が定められています。
特定名称酒とは
「特定名称酒」とは、原料や製造方法に基づき以下の8種類に分類される日本酒を指します。
- 吟醸酒: 精米歩合60%以下。吟醸造りで、香味・色沢が良好。
- 大吟醸酒: 精米歩合50%以下。特に優れた香味・色沢を持つ。
- 純米酒: 米と米麹のみを使用。香味・色沢が良好。
- 純米吟醸酒: 精米歩合60%以下の純米酒。吟醸造り。
- 純米大吟醸酒: 精米歩合50%以下の純米酒。特に吟味された香味・色沢。
- 特別純米酒: 精米歩合60%以下または特別製法で作られた純米酒。
- 本醸造酒: 精米歩合70%以下で、醸造アルコールを添加。香味・色沢が良好。
- 特別本醸造酒: 精米歩合60%以下または特別製法で作られた本醸造酒。
精米歩合の重要性
精米歩合は玄米をどれだけ削ったかを示し、雑味を減らすための指標です。精米歩合60%は外側を40%削った状態を指します。削る割合が高いほど軽やかで透明感のある酒質になる傾向があります。
吟醸造りの技術
吟醸造りは、精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、特有の芳香(吟香)と滑らかな酒質を実現する伝統的な製法です。通常より時間をかけて4〜5週間発酵させます。
特定名称酒の製造状況
- 令和3酒造年度(2021年7月〜2022年6月)の特定名称酒製造割合は43.6%(前年から増加)。
- 総製造数量は300,913klで、そのうち特定名称酒は131,059kl。
- 純米酒: 前年度比+14.1%の大幅増加。
- 本醸造酒: 前年度比-39%の大幅減少。
醸造アルコールの役割
醸造アルコールは風味の調整や乳酸菌の繁殖防止に使用されますが、使用量は原料米重量の10%以内と規定されています。
地理的表示(GI) について
GI(地理的表示)は、地域ごとの特性を生かした製品を保護する制度で、1994年に国税庁が導入しました。この制度はもともとワインの「原産地呼称制度」に由来し、日本酒を含む酒類全般に適用されています。
主なGI指定地域と特徴
- 和白山(2005年指定): 石川県白山市の伝統酒。精米歩合70%以下、国内産米を使用。
- 日本酒(2015年指定): 国内産米と国内製造に限定し、輸出促進を目的とする。
- 山形(2016年指定): 都道府県単位で初の指定。柔らかく透明感のある酒質が特徴。
- 灘五郷(2021年指定): 兵庫県の主要酒造地帯で、「六甲おろし」による適切な気候と宮水の存在が強み。
- 利根沼田(2021年指定): 群馬県北部の清酒で、雪ほたかなど地元産米を使用。
GI指定のメリット
地域ブランドの確立や差別化、品質の信頼性向上に寄与します。消費者にとっては一定品質の保証となり、生産者にとっては輸出促進や価値向上の手段となります。
GI白山の具体的な条件
- 国内産米を使用し、醸造用玄米の等級は一等以上。
- 精米歩合70%以下、水は白山市内の採取地限定。
- 醸造および貯蔵を白山市内で実施。
- 麹米の使用割合は20%以上。
近年の動向
- 2020年: 和歌山梅酒がリキュール部門でGI指定。
- 2021年: 萩、利根沼田など5つのGIが新たに指定。
- 2022年: 新潟、滋賀がGI指定を取得。
焼酎とは
焼酎は日本を代表する蒸留酒であり、アルコール分の異なる2種類の蒸留法に基づき「連続式蒸留焼酎 」と「単式蒸留焼酎」に分類されます。
焼酎の定義
- 連続式蒸留焼酎: 蒸留機を用いて純度の高いアルコールを連続的に作り出す方式。アルコール分36度未満。
- 単式蒸留焼酎: 原料の風味を活かした製法で、1回のみ蒸留を行う方式。アルコール分45度以下。
両者を混合したものは「混和焼酎」と呼ばれます。
本格焼酎の条件
「本格焼酎」の呼称は1971年に認可され、単式蒸留焼酎に限定されますが、すべてが本格焼酎とはなりません。
- 指定の原料: 穀類(米・麦など)、芋類、清酒粕、黒糖、または政令で定める物品(栗、胡麻など49品目)。
- 麹の使用、水以外の添加物は一切禁止。
連続式蒸留焼酎
1895年に日本に導入され、無味無臭のクリアな味わいが特徴です。主にサワーやカクテルのベースとして利用されます。
単式蒸留焼酎
15世紀の沖縄が発祥とされる蒸留法で、原料の個性を活かした濃厚な味わいが魅力です。
焼酎の地理的表示(GI)
焼酎の地理的表示は地域特性を守るための制度で、以下の4つが指定されています。
壱岐焼酎(長崎県)
壱岐島の地下水と玄武岩の溶岩台地から生まれる特産品。米麹1/3、大麦2/3の比率で作られ、香ばしい麦の香りとほのかな甘みが特徴。
球磨焼酎(熊本県)
人吉盆地を流れる球磨川の伏流水を使用した米焼酎。米由来のまろやかな甘さと深い味わいを持つ。
琉球泡盛(沖縄県)
15世紀半ばに生まれた蒸留酒。タイ米と黒麹菌を用い、濃厚でキレのある味わいが特徴。「古酒(クース)」として長期間熟成することで深い香味を楽しむこともできます。
薩摩焼酎(鹿児島県)
シラス台地で育つサツマイモを原料とする芋焼酎。原料由来の甘みと華やかな香りが特徴。
GI制度の意義
地理的表示制度は地域特有の製法や品質を守り、ブランド価値を高めるとともに、消費者に品質保証を提供します。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。