アルゼンチン | ソムリエ試験教本まとめ
※本サイトには記事内にプロモーションが含まれています。視覚的に学習しやすくするよう商品名やワイン名にamazonリンクを貼っています。
このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
アルゼンチンの政治と経済の現状
2019年の秋、アルベルト・フェルナンデス元首相が大統領に就任。彼は膨大な債務を引き継ぎ、まず債務再編交渉を始めたが、2020年5月に支払いをしなかったことで9度目のデフォルトの危機に直面した。最終的に2020年8月に債権者との合意が成立し、デフォルトを回避した。しかし、2023年もインフレ率は上昇し、完全失業率は6.3%に回復。しかし、貿易収支は69億2,300万ドルの黒字を記録したものの、前年を下回り半減している。
アルゼンチンのワイン産業の現状
アルゼンチンはフランス、イタリア、スペインと並ぶワイン消費国で、1970年の国民1人当たり年間ワイン消費量は91.86リットル。しかし、炭酸飲料やビールの消費増加に伴い、2021年の消費量は24.56リットルまで減少した。また、2022年のワイン輸出量は前年比で20.5%減少しているが、輸出金額は7.4%増加している。日本におけるアルゼンチンワインの輸入量は、2014年の40万ケースをピークに減少し続け、2022年には17万7,000ケースにとどまった。
チリとの輸出競争
隣国チリは日本とEEPAを締結しワイン関税を免除され、輸入が増加。アルゼンチンワインは長距離輸送によりコストが高く、例えば同じ品質のワインが、スーパーではチリワインが480円に対し、アルゼンチンワインが980円に販売されることが多い。これにより、アルゼンチンワインは厳しい環境に置かれている。
アルゼンチンのワインの歴史
アルゼンチンにおけるワイン用ブドウ「ヴィティス・ヴィニフェラ」は、コロンブスがアメリカ大陸に到達した際にスペインから持ち込まれた。これらのブドウはフランス語で「リスタン」と呼ばれ、現地ではクリオジャと呼ばれるようになった。1540年代から1570年代には、さまざまなグループがアルゼンチンにブドウを持ち込んだ。特に、1853年に設立された「キンタ・ノルマル」で、フランスからの植物学者ミシェル・エイム・プージェが新しいワイン製法を導入した。
著名なワイナリーと人々
19世紀後半には多くのイタリア移民がアルゼンチンに来ており、特に以下のワイナリーが重要:
- ボデガス・サンタ・アナ - 1891年設立、Luls Tirassoによる。
- ボデガ・ノートン - 1895年設立、Edmundo James Nortonによる。
- ボデガ・アトマシア - 1910年設立。
ワイン製法と変遷
アルゼンチンのワイン生産は、特にマルベックが広く栽培されるようになった。1860年代におけるニコラス・カテナは、カベルネ・ソーヴィニョンの栽培を促進し、1990年代には新しい市場の開拓にも成功した。現在、国際市場ではマルベックが高評価を得ている。特に、メンドーサでのワイン製造は注目され、また標高による気候の違いを生かし、等級の異なるブドウが栽培されている。
アルゼンチンの気候風土とワイン生産
アルゼンチンのブドウ栽培は、国土の西側に延びるアンデス山脈の影響を受けており、最北端のフフイ州から南端のチュブ州まで直線距離で2,500kmにも及ぶ。アンデス山脈は、標高450mから3,329mの間でブドウ畑が広がり、海抜4mのリオ・ネグロ州のブドウ畑も存在する。ここは、大陸性の気候を持ち、非常に強い紫外線や昼夜の温度差が特徴で、質の高いブドウの生育に寄与している。
アルゼンチンの主要なブドウ品種
アルゼンチンのブドウ栽培面積は、特にマルベックが中心である。他の品種は減少傾向にあり、2021年にはマルベックが46,366ha、セレサが25,451haとなる。特に、マルベックは南西フランスが起源で、1853年にメンドーサに植えられ、その後アルゼンチンの気候に適し、品質が向上している。
- マルベック: 起源は南西フランスで、1853年にメンドーサに植えられた。タンニン量が海抜高度と共に増加し、風味豊かなワインを生む。
- セレサ: 果皮はピンク色で、主に白ワインとして使用される。近年産地は減少傾向。
- ボナルダ: イタリアから持ち込まれた品種で、現在はアルゼンチンで広く栽培されている。
- カベルネ・ソーヴィニヨン: 19世紀後半に植えられ、近年その栽培面積は増加している。
- クリオジャ: 古い品種で、広く使われるが、栽培面積は減少している。
- ペドロ・ヒメネス: 白品種で、特にメンドーサとサン・フアンに栽培されている。
- トロンテス: 高原で育成されフルーティーなアロマが特徴で、特にサルタのトロンテスが高評価。
アルゼンチンのブドウ栽培の歴史と課題
歴史的には、インカ時代から雪解け水を利用してきた。用水路が整備され、現在のブドウ栽培を支える基盤を作り上げている。加えて、近年の気候変動による水利の問題が深刻であり、ワイン生産者は新しいブドウ畑を冷涼な土地に開いている。
生産地域の具体例
主要な生産地域には、サンタ・マリア (カタマルカ)、カチ (サルタ)、ケブラダ・デ・ウマワカ (フフイ) などがあり、これらは標高2,000m以上の高地でブドウ栽培が行われている。このような高地の特性は、強い紫外線と昼夜の温度差が影響し、ボディのしっかりしたワインを生成する要因となっている。
栽培技術の変遷
近年、ブドウ樹の仕立て方が更新され、点滴灌漑が採用されてきている。これにより、湿気を抑えながら効率的な水利用が可能となった。伝統的な棚仕立てから新しいVSP(バーティカル・シュート・ポジション)方式へと移行している。
気候の影響と品質向上
アルゼンチンのブドウ畑は、日照量が多く、湿気が少ないため、カビの発生が少ない。この環境は有機的なアプローチが可能で、ブドウの芳香や味わいを強調する。また、海抜が高いことから、果実の糖度が増している。
アルゼンチンのワイン法と品質分類
アルゼンチンのワイン法は、ワインの生産と品質を規定する重要な法律です。特に品質分類について詳しく説明します。
ワイン法14878
この法律は、1959年11月6日に公布され、国立ブドウ栽培醸造研究所(INV)がアルゼンチンのブドウ栽培とワイン生産を監督することを定めています。第17条では、ワインの分類が次のように定義されています。
- Vinos Genuinos: 新鮮なブドウまたは果汁を使ったスティルワインで、地域ごとの最低ボーメ度が決定される。
- Vinos Especiales: 3つのカテゴリーがある。
- カテゴリーA: アルコール分が12.5%以上。
- カテゴリーB: 醸造中にアルコールを加え、15%以上のワイン。
- カテゴリーC: 濃縮果汁やブドウのアルコールを加えて15%以上。
- Vinos Espumosos: 二次発酵させたスパークリングワインで、4気圧以上。
- Vino Gasificado: スティルワインにガスを加えたもの。
- Vino Compuesto: ワインに芳香物質や甘味を加えたもの。
- Chicha: アルコール発酵途中のワインで、アルコール分が5%未満。
ワインとブドウ原料のスピリッツに関する法律25163
1999年10月6日施行のこの法律は、アルゼンチンワインの品質をさらに厳格に管理します。ワインはI.P.、I.G.、D.O.C.の3つに分類され、産地名称が保護されます。
- I.G. (地理的表示): 狭い地域名で、80%以上のブドウがその地域で収穫される必要があります。
- D.O.C. (原産地呼称): 認定された地域で収穫されたブドウを用い、定められた方法で醸造されなければならない。例: 2005年のD.O.C.ルハン・デ・クハタージョ、2007年のD.O.C.サン・ラファエル。
ワインの熟成期間と表示
ワインの熟成に関する表示もあります。Reservaは最低1年、Gran Reservaは最低2年熟成が求められます。
アルゼンチンの料理と食材
アルゼンチン料理は、地理的条件と移民文化が大きな影響を与えています。具体的な料理や食材の特徴を説明します。
地域ごとの料理
- ノルテ: インカの伝統が色濃く、ジャガイモやトウモロコシが主な作物。Humitaやチーズのエンパナーダが名物。
- 中央部クージョ: ブドウとワインが名産。オリーヴオイルが豊富で、特にArauco種は評価が高い。
- 中央部パンパ: チョリソの生産が盛ん。自然のハーブが豊富。
- 首都ブエノスアイレス: 食文化にイタリアの影響が強く、ピザやパスタが一般的。
- パタゴニア: Cordero Patagonico(ラム肉)が有名で、地元産のマルベックと合わせるのが人気。
食材の変遷
近年、牛肉の消費が減少し、鶏肉と豚肉が増加傾向にあります。2019年の1人当たりの年間消費量は、牛肉51kg、鶏肉46kg、豚肉17kgで、消費者の購買力が影響しています。
アルゼンチンの地理的表示(I.G.)
以下は代表的な地理的表示の一部です。
ノルテ地方について
アルゼンチン北西端フフイ州にあるノルテ地方は、標高2,720~3,329mという、世界で最も高地にあるブドウ畑、LG.ケプラダ・デ・ウマワカが知られています。ここでは、南緯23度という熱帯に位置しながらも、標高による寒冷さが日中の熱暑を緩和する独特の気候条件が特徴で、主にマルベックやシラーなどの黒ブドウが栽培されています。これらのブドウは、極めてフルーティで豊満な味わいを持ちながら、繊細な酸味を引き出しています。
カルチャキヴァレー
カルチャキヴァレーはサルタ州、トゥクマン州、カタマルカ州にまたがるブドウ栽培エリアで、面積は6,563ha(2021年)です。標高は750~2,980mに所在し、特にこの地域で栽培されるトロンテス品種は、バラの香りが特徴で、アルゼンチン国内でも高品質かつ個性的な評価を受けています。また、マルベックやカベルネ・ソーヴィニョン、タナも栽培されており、冷涼な高地で育ったマルベックは特に注目を集めています。カルチャキ川沿いの美しい壮大な景観は、手付かずの自然のままで、ブドウ栽培に理想的な環境を提供しています。
歴史的背景
元々インカのカルチャキ族が住んでいたこの地域は、スペインの侵略によって開拓が進みました。水源はカルチャキ川で、現在カファジャテが中心地となっており、ここには多くのワイナリーが集まっています。スペインの探索者たちは、先住民の文化を追ってカファジャテに到達し、その後、ブドウ畑を広げていったと考えられています。
クージョ地方について
クージョ地方は、ラ・リオハ州、サン・フアン州、メンドーサ州の3州から構成され、南アメリカ最大のブドウ生産地です。特にメンドーサ州は、全体の約70%(148,996ha)を占めており、多様な気候と地質が独自のワインスタイルを生み出しています。ここでは、主力品種のマルベックが特に有名で、19世紀半ばにフランスから導入されました。
メンドーサの特徴
メンドーサは強い日差しと少ない雨のため、有機栽培が可能な環境です。主要品種には、マルベック、トロンテス、カベルネ・ソーヴィニョンがあり、特にマルベックは色が濃く、アメリカ市場で非常に高く評価されています。マルベックは、スモーキーでフルボディな赤ワインを生み出します。クージョ地方のワインは、フルーティーかつ濃厚で、長期熟成にも耐える品質を誇ります。
メンドーサのサブリージョン
- メンドーサ北部: 標高550~700mで、トロンテスを中心に、特にフローラルなアロマが特徴のワインが栽培されています。
- プリメーラ・ソナ: メンドーサ市に初めてブドウ畑が開かれた区域で、ここにはアルゼンチンの醸造所の40%が集中しています。
- ウコ・バレー: メンドーサ市の南西に位置し、標高860~1,610mの地域。新しい種類のブドウを開発するワイナリーが多く、特に品質の高いワインを生み出しています。
パタゴニア地方について
アルゼンチンの南部には、ラ・パンパ州、ネウケン州、リオ・ネグロ州などがあり、ここは栽培面積3,724ha(2021年)と少なく、特に最南端に位置しています。気候は冷涼で、成長期間が長く、ピノ・ノワールやソーヴィンヨン・ブランなどの栽培が行われています。冷涼な気候は、酸味のあるワインを作り出す要因の一つです。
主要ブドウ品種と栽培
ここでは、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロ、ピノ・ノワールなどが栽培されており、特にナイエン州やリオ・ネグロ州では、ピノ・ノワールが注目を集め、高品質なワインが生産されています。冷涼さを生かしたクリーンな風味のワインが楽しめます。
特筆すべきワイナリー
パタゴニア地方のブドウ栽培は、遅延リスクが少なく、成熟に向けた条件が整っています。特に注目を集めているのは、チュブ州のトレベリンで、ここではシャルドネやピノ・ノワールが栽培され、その品質は年々向上しています。また、他の地域との違いを生かしたユニークなスタイルのワインも多く見られます。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。