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ブルガリア | ソムリエ試験教本まとめ

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このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。

歴史的背景

ブルガリアは、古代文明の十字路に位置し、8000年以上前から農業が存在した。紀元前約1500年から6世紀の間に住んでいたトラキア人は、ワインをそのまま飲む文化を持ち、ワインは知恵と勇気とされ、生活の一部になった。古代ギリシャの酒神ディオニソスはトラキアの神ザグレウスが起源であり、彼の神殿は重要な文化的遺跡として遺されている。

ディオニソス 写真
ディオニソス : 古代ギリシャの酒神で、ワインと関連した文化の象徴。 (参照元)

ワインの発展

7世紀にブルガリア王国が建国され、9世紀後半にはボリス1世がキリスト教を国教と宣言。これによりワインの重要性が増した。オスマン帝国支配下の14世紀にはワイン生産が減少したものの、18世紀から19世紀にかけて、生産量が増加し、ロシアやポーランドへの輸出が盛んになった。特に、ブルガリアのワインはフランスワインと比較され「優れた」と評価された。

1879年には酒税法が制定され、フィロキセラ🔗の影響で約3分の1のブドウ畑が被害を受け、1896年には保護機関が設立された。1902年にはワイン研究所が設立され、1919年にはブドウ畑が44,000haまで減少したが、1938年には復興する。

ワイン生産の現状

2007年にEUに加盟後、ブルガリアでは346のワイナリーが運営され、高品質なワイン生産が進行中となっている。特に、古来のワイン造りと最新技術が融合していることが特徴で、ビオ・ワインも注目を集めている。

気候風土

ブルガリアは多様な地形により気候が異なる。特に、バルカン山脈が北側と南側での気候の違いを生み出し、ドナウ平原🔗トラキア・ヴァレー🔗の二つの主要なワイン生産地域を形成している。夏は乾燥し、高温の日もあるが、日夜の大きな温度差がブドウに理想的な条件を提供している。

ドナウ平原 写真
ドナウ平原🔗 北部のブドウ栽培地域で、大陸性気候とチェルノゼム土壌が特徴。 (参照元)
トラキア・ヴァレー 写真
トラキア・ヴァレー : 多様な品種が栽培される高品質土壌の地域。 (参照元)

地方料理と食材

ブルガリアの食文化はトルコ料理やギリシャ料理に影響を受けており、食材も多様である。代表的な料理には以下のものがある:

  • LYUTENITSA - トマト、赤ピーマン、ナスから作られるスプレッド。
  • LUKANKA - ブルガリアの東部サラミ。
  • SUDJUK - 乾燥サラミ。
  • SAMARDALA - ハーブ塩の一種。
  • BANITSA - 生地にチーズや野菜を包む料理。
  • SHOPSKA SALATA - トマト、キュウリ、ホワイトチーズのサラダ。

ブルガリアの代表的な飲料としてRAKIYA(果物の蒸留酒)があり、国民に広く親しまれている。

SAMARDALA 写真
SAMARDALA : ハーブ塩の一種で、料理に風味を加える。 (参照元)
SUDJUK 写真
SUDJUK : 乾燥したサラミで、ブルガリアを代表する肉製品。 (参照元)
BANITSA 写真
BANITSA : 生地にチーズや野菜を包んで焼いた料理。 (参照元)
LUKANKA 写真
LUKANKA : ブルガリアの東部で作られるサラミの一種。 (参照元)

主な土着/固有品種

ブルガリアには2,000を超える土着/固有品種が存在し、特に白ブドウと黒ブドウに分かれています。それぞれの品種について、その特徴や原産地を以下に詳しく説明します。

白ブドウ

  • ミスケット・チェルヴェン (Misket Cherven):
    古い固有品種で「バラの谷」(ローズヴァレー)で栽培されています。果皮はピンクがかりの色合いを持ち、9月末から10月初旬に成熟します。魅力的な麦わら色の辛口白ワインを生産し、アロマには白バラ、リンゴ、メロン、桃の香りに加えて蜂蜜やハーブが感じられます。酸度が比較的低いため、通常は他の白品種とブレンドされることが多いです。この品種はデザートワインとしても評価されています。
  • フラチャンスキ・ミスケット (Rachanski Misket):
    北西部ヴラツァで栽培される古い固有品種です。9月前半に成熟し、透明感のある黄金色が特徴です。バラの繊細なニュアンスとフレッシュフルーツのアロマを持ち、バランスがとれた高品質のワインを生み出します。特に、この品種はシャルドネとのブレンドでもその魅力を発揮します。
  • サンダンスキ・ミスケット (Sandanski Misket):
    1963年にメルニック(シロカ・メルニシュカ・ロザ)とタミャンカの交配により誕生し、1978年に正式承認されました。9月中旬に成熟し、ブルガリア南西部やサンダンスキ周辺で栽培されています。高い酸味とアロマティックな特徴を持つ辛口ワインを生産します。
  • タミャンカ (Tamyanka):
    古くからあるミュスカ・ア・プティ・グランからの変遷と考えられる品種です。特徴的なアカシアの花とナツメグのアロマがあり、非常に珍しい存在です。9月前半に成熟し、ブルガリア全土で栽培されていることから、地域によるテロワールの影響を受けた風味が楽しめます。
  • ディミャット (Dimyat):
    古代に持ち込まれた品種で、デザート用ブドウとしても人気です。白ブドウ栽培面積の約10%を占め、特にヴァルナやシュメン周辺で多く栽培されています。明るい緑がかった麦わら色が特徴で、桃の香りを持つフレッシュなワインを生産します。甘味と酸味のバランスが良く、生食用としても優れた選択肢です。
  • ブルガリアン・リースリング (Bulgarian Riesling):
    1951年に誕生し、1961年に正式承認された品種です。9月後半に成熟し、非常に少量が生産されていますが、主に白ワインのブレンド用として用いられます。特にトラキア・ヴァレーでの栽培が盛んで、この地域のテロワールを反映したワインが期待できます。
タミャンカ 写真
タミャンカ : アカシアの花とナツメグのアロマを持つ非常に珍しい白ブドウ品種。 (参照元)
ディミャット 写真
ディミャット : 古代に持ち込まれた品種で、デザート用ブドウとして人気。 (参照元)
ミュスカ・ア・プティ・グラン 写真
ミュスカ・ア・プティ・グラン : クレレット・ド・ディーで主要な白ワイン用品種 (参照元)
メルニック 写真
メルニック : 地中海性気候の影響を受けた非常に古い黒ブドウ品種。若いうちはチェリーの香りが特徴。 (参照元)

黒ブドウ

  • マヴルッド (Mavrud):
    古い固有品種で、プロヴディフやアセノフグラッドなどの地域で栽培されています。全国の栽培地の約29%でのみ生産されますが、人気の高い赤ワインを生産します。冬の気温がマイナス16度以上の地域で育ち、特に乾燥した暖かい秋を必要とします。熟成することで黒系と赤系のベリーのアロマに加え、スパイスの風味が際立ちます。
  • メルニック (Melnik):
    非常に古く、地中海性気候の影響を受けた品種で、特にブルガリア南西部のメルニック地方が原産地です。若いうちはチェリーや黒系のベリーのアロマが感じられ、熟成により複雑な風味が増します。この品種は長熟向きのワインとして知られ、アロマや風味の豊かさが特長です。
  • メルニック55 (Melnik 55):
    シロカ・メルニシュカ・ロザとヴァルディギエの交配により1963年に生まれ、1979年に正式承認されました。独特なルビー色とフルーティーな香りを持ち、特にタバコやスパイスのアロマが魅力です。フルボディでありながら、すっきりとした後味のあるワインに仕上がります。
  • ルビピン (Rubin):
    1940年代にシラーとネッピオーロの交配によって誕生した赤ワイン用品種です。ブルガリア全土で栽培され、9月中旬から下旬に成熟します。アロマは熟した果実とスパイスのニュアンスが調和し、特にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロとのブレンドで、さらなる複雑性が加わります。
  • パミッド (Pamid):
    古い固有品種であり、ブルガリア全土で広く栽培されています。9月中旬頃に成熟し、軽快な赤ワインが多く生産されます。香りは赤系のベリーを思わせるもので、一般的には飲みやすい若いうちに楽しむワインとなります。
  • ガムザ (Gamza):
    東ヨーロッパでは「カダルカ」とも呼ばれ、現在は主にブルガリア北西部で栽培されています。ワインはルビーレッドで、ラズベリーやチェリーのアロマが感じられ、比較的酸度が高く軽快な飲み口で知られています。適度な熟成が行われることで、さらに旨味が引き立ちます。
  • ルエン (Ruen):
    1951年にシロカ・メルニシュカ・ロザとカベルネ・ソーヴィニヨンとの交配で作られ、1964年に正式承認されました。ブルガリアのブラゴエフグラッド周辺で栽培されており、9月後半に成熟します。高い色素と酸味を持ち、非常にバランスの取れた熟成向きのワインが生産されます。
ガムザ 写真
ガムザ : 東ヨーロッパでカダルカとも呼ばれる黒ブドウで、酸度が高く軽快な飲み口のルビーレッドワインを生む。 (参照元)
パイス 写真
パイス : チリ特有の古い赤ワイン用ブドウ品種。 (参照元)
パミッド 写真
パミッド : 古い固有品種で、消費用の軽い赤ワインが多く生産される。 (参照元)
マヴルッド 写真
マヴルッド : 人気の高い古い固有品種の黒ブドウで、冬の寒冷地域で育つ。 (参照元)
メルニック55 写真
メルニック55 : シロカ・メルニシュカ・ロザとヴァルディギエの交配で1979年に正式承認された黒ブドウ品種。 (参照元)
ルエン 写真
ルエン : 1951年にシロカ・メルニシュカ・ロザとカベルネ・ソーヴィニヨンを交配し、1964年に正式承認された黒ブドウ。 (参照元)

ワイン法と品質分類

1960年に、ブルガリアのワイン産地は5つの地域に分かれました。1970年代後半から80年代にかけて原産地名称統制制度が施行され、2007年にはEU基準による原産地呼称保護ワイン(P.D.O.)と地理的表示🔗保護ワイン(P.G.I.)が導入されました。特に以下の情報が重要です:

  • P.D.O. (Protected Designation of Origin):
    52の生産地が登録されており、特に特定の地域で生産される高品質ワインに適用されます。
  • P.G.I. (Protected Geographical Indication):
    旧来の5地域からトラキア・ヴァレーとドナウ平原に絞り込まれ、地理的特性を重視したワインが対象となります。

ワインの産地と特徴

ブルガリアの主要生産地域は一般に4つに分類されます。各地域の特性を以下に示します:

北部: ドナウ平原 (P.G.I.)

ドナウ平原はブルガリア北部に位置し、ブドウ栽培が盛んな地域です。気候は大陸性で、土壌は主にチェルノゼムとなっており、バラエティ豊かな品種が栽培され、赤ワインの生産が特に活発です。

東部: 黒海沿岸🔗 (広域P.D.O.)

この地域では主に白ブドウ品種が育てらり、土壌は砂質粘土質や石灰質で形成されています。温暖な気候がブドウの品質向上に寄与しており、特にミスケット・チェルヴェンやフラチャンスキ・ミスケットが有名です。

黒海沿岸 写真
黒海沿岸 : ジョージアの湿度が高い亜熱帯地域で、特有のワインが作られる。 (参照元)

南部: トラキア・ヴァレー (P.G.I.)

多様な品種が栽培されており、土壌は腐植石灰質の高品質で知られています。特にマヴルッドが名高い産地とされ、ここで生産されるワインは豊かな風味と深い色合いを持っています。

南西部: ストルマ・ヴァレー (P.D.O.)

トラキア・ヴァレーの西側に位置しており、特にマヴルッドやメルニックなどの赤ワイン用ブドウが栽培されています。この地域では最新の技術を駆使したワイン生産が行われており、品質の高いワインが生まれています。

記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。

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