ギリシャ | ソムリエ試験教本まとめ
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このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
ギリシャのワイン産業の概要
ギリシャは、ブドウ栽培の歴史が古く、4,000年以上の文化的背景を持つ国です。特に、ギリシャには固有の土着品種があり、近年ではそれに焦点を当てたワイン生産が注目を集めています。2022年のブドウ栽培面積は95,922ha、ワイン生産量は2,127,000hlです。
主要アペラシオンとその特徴
アペラシオンとは、特定の地域で生産されるワインの品質を示す基準です。以下はギリシャの主要なアペラシオンとその特徴です。
- ナウサ: 赤ワインのアギオルギティコで有名。
- ネメア: 赤ワインのアギオルギティコの主要産地。
- マンティニア: 爽やかな白ワインのモスホフィレロが知られる。
- アミンデオ: クシノマヴロが生産される北部の産地。
- サントリーニ: アシルティコが特産し、火山由来の独特な味わいが特徴。
著名なブドウ品種
以下のブドウ品種はギリシャで特に有名です。
- アシルティコ: サントリーニ島の特産。
- クシノマヴロ: ギリシャ北部の代表的な赤ワイン用品種。
- アギオルギティコ: ネメアの赤ワインに使用される品種。
- モスホフィレロ: マンティニアで使用される白ワイン用品種。
- サヴァティアノ: アッティカ地方で栽培される白ワイン用の品種。
ワイン製法の変遷
1970年代以降、ギリシャでは近代的な醸造技術が導入され、伝統的なワイン製法からの進化が見られます。特に、マストの酸化防止や赤ワインの適切な醸し技術が進化し、高品質なワインが生産されています。
ギリシャワインの歴史
ギリシャは、紀元前4千年代からワインを生産しており、先史時代からのブドウ栽培の歴史が確認されています。古代ギリシャにはディオニュソスという酒の神が崇拝されており、ワインは宗教儀式や社会的・文化的な役割を担っていました。紀元前6世紀には、アッティカやナクソス、ロドス島がワインの品質栽培に発展しました。
近代ギリシャワインの再生
2000年以降、EUとの連携による原産地呼称制度が導入され、ギリシャのワイン品質が向上しました。特に、品質重視の小規模生産者の増加により、個性的で高品質なワインが生産されています。また、2018年にはサントリーニの伝統的ワイン葡萄栽培が無形文化遺産に登録されています。
ギリシャ料理とワインの関係
ギリシャ料理もまた、ワインと密接に関連しています。ギリシャの食文化には、Meze(多様な前菜を少量ずつ楽しむスタイル)があり、特にワインとの相性が良いとされています。代表的な料理には、スブラキ(ピタパンにロースト肉を挟んだ料理)やムサカ(ナスと肉を層に重ねたオーブン料理)などがあります。
気候と土壌の条件
ギリシャのワイン生産地は南北に広がり、地中海性気候が主要な影響を与えています。特に、北部は大陸性気候の影響を受け、夏の暑さが和らぐため、ブドウの生育に適した環境が整っています。
ギリシャの主要ブドウ品種
ギリシャは約300の土着ブドウ品種を有し、1980年代から国際品種の植え付けが進んだが、近年では土着品種の復活が見られる。現在、ワイン生産量の90%を土着品種が占め、国際品種は約10%となっている。
白ブドウの主要品種
- サヴァティアノ (Savatiano): 栽培面積10,370 ha。酸味があり、特にアッティカで生産され、レチーナワインに使用される。
- ロディティス (Roditis): 栽培面積9,060 ha。フレッシュで酸味があり、様々なスタイルのワインに適用される。
- アシルティコ (Assyrtiko): 栽培面積2,166 ha。特にサントリーニで有名で、骨格のある白ワインを生む。
- モスホフィレロ (Moschofilero): 栽培面積1,182 ha。花の香りが強く、ペロポネソス地方で多く栽培される。
黒ブドウの主要品種
- アギオルギティコ (Agiorgitiko): 栽培面積3,162 ha。ネメア地域で栽培され、スパイシーでしっかりとした味わい。
- クシノマヴロ (Xinomavro): 主に北部で栽培され、長期熟成に優れた赤ワインを生む。
- リャティコ (Liatiko): エーゲ海の島々で栽培され、軽やかな赤ワインを生む。
- マンディラリア (Mandilaria): クレタ島などで栽培され、酸味が豊かでボディのある赤ワイン。
ギリシャのワイン法と品質分類
1981年のEU加盟後、ギリシャではEUのワイン法に従った原産地呼称制度を採用。ワインはP.D.O. (Protected Designation of Origin)およびP.G.I. (Protected Geographical Indication)に分類される。
P.D.O.とP.G.I.
- P.D.O.: 厳しい品質基準に基づき、生産エリアの特定の原産地名を使用することができる。
- P.G.I.: 特定の地理的表示に基づいて生産されるが、P.D.O.ほどの厳格な基準はない。
伝統的なアペラシオンと具体例
伝統的なアペラシオンにはレチーナがあり、松脂の香りが特徴。アッティカ地方で主にサヴァティアノから造られるが、各地に広がっている。
具体的な産地名とワイナリー
- サントリーニ (Santorini): 特にアシルティコが有名なワイン生産地。
- ネメア (Nemea): アギオルギティコが主に栽培される地域。
- クレタ (Crete): 土着品種が多く栽培され、近年品質向上が見られる。
ギリシャの歴史的信条
古代から続く伝統があり、特に紀元前からのワイン醸造の歴史がある。最近では高品質な土着品種が復活し、世界的に注目を集めている。
ギリシャの地理的地方区分
ギリシャは北部のトラキア、マケドニア、イビロス、中部のテッサリア、中央ギリシャ、ペロポネソス半島、そしてイオニア諸島、エーゲ海の島々、クレタ島の9つの地方に区分されています。この区分は、ギリシャの行政的な区分とは若干異なるため、それぞれの地域の特徴やワイン生産に影響を与える要素が考慮されています。
トラキア地方
この地方はギリシャの最東にあり、トルコやブルガリアと国境を接しています。マロニアとアヴディラが有名なワイン産地で、近年はツァンタリ社によって新たなワイン時代が到来しました。地元品種のマヴルディが特徴的で、この品種を使用したワインは他のブドウ品種とブレンドされて作られています。トラキアでは主に赤ワインと白ワインが生産されており、新しいスタイルのワインが注目を集めています。
歴史的背景
古代にはトラキア人が住んでおり、東ローマ帝国の時代には重要な地域となりました。バルカン戦争と第一次世界大戦を経て、エヴロス川以西はギリシャに加わりました。この地区の長い歴史の中で、ワイン造りの伝統も育まれてきました。
気候と土壌
この地方は温暖で湿度が高く、特にブドウ栽培に適したエリアが限られています。ロド山脈が北からの冷たい風を防ぎ、エーゲ海からの影響を和らげています。また、この地域の土壌は多様で、ブドウ生産に良い影響を与えています。
マケドニア地方
ギリシャ北部に位置し、西はピンドス山脈、東はトラキアと接しています。中心都市はテサロニキで、豊かな農地が特徴です。この地方では赤ワインが特に評価されており、多くのワイナリーが高品質なワインを生産しています。
歴史的背景
この地方はアレキサンダー大王の故郷であり、古代マケドニア王国に属していました。1991年に北マケドニア共和国が独立しましたが、マケドニア地方は今でも多様な文化と歴史を色濃く持っています。
気候と土壌
山地が多く、エーゲ海沿岸には肥沃な土地があります。降水量がやや多く、温暖な気候がブドウ栽培に適しています。この地の土壌は粘土質が中心で、ブドウの成長に好適です。
主要ブドウ品種
- **白ブドウ**: ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ
- **黒ブドウ**: クシノマヴロ、モスホマヴロ、シラー
代表的なP.D.O.ワイン
- **ナウサ**: 黒ブドウのクシノマヴロによる高品質の赤ワインであり、バランスの取れた風味が特徴です。
- **アミンタオ**: クシノマヴロ主体の赤ワインで、果実味とタンニンの調和が絶妙です。
- **グメニサ**: クシノマヴロとネゴスカのブレンドで造られ、芳醇な味わいを持つ赤ワインです。
イビロス地方
北西部に位置し、イオニア海に面しています。この地方はブドウ生産は少ないものの、品質の高い個別のワインが特徴です。ここでのワインは、地域の気候特性を活かしたものとなっています。
歴史的背景
モロッシア王朝が統治し、古代の重要な地域でした。この地域はオスマン帝国下にあったが、20世紀初頭にギリシャ領として認められました。古い伝統を受け継ぎながら、現代のワイン生産が行われています。
主要ブドウ品種
- **白ブドウ**: デビナ、トラミネール
- **黒ブドウ**: カベルネ・ソーヴィニヨン、オプ・ヴラヒコ
代表的なP.D.O.ワイン
- **ジツァ**: 白ブドウのデビナを使用したスパークリングワイン。このワインはフレッシュな風味で、食事との相性が良いです。
テッサリア地方
ギリシャ本土中央に位置し、ブドウ栽培はそれほど盛んではありませんが、重要な農業地域です。テッサリアの気候は、農作物の栽培に適しており、特に果実の品質が高いことで知られています。
歴史的背景
テッサリア地方の歴史は古く、過去に多くの民族の影響を受けた地域です。1881年にギリシャ王国に編入され、独自のワイン文化を形成しました。
気候と土壌
周囲が山に囲まれた盆地で、肥沃な土壌が特徴です。降雨量が多く、果実の栽培に適した環境が整っています。
主要ブドウ品種
- **白ブドウ**: アシルティコ、ロディティス
- **黒ブドウ**: リムニョ、カベルネ・ソーヴィニョン
代表的なP.D.O.ワイン
- **ラプサニ**: クシノマヴロを使用した赤ワインで、深みのある味わいを楽しめます。
- **メセニコラ**: メセニコラ・ブラックを使用した高品質赤ワインで、豊かなアロマが魅力的です。
中央ギリシャ
アッティカ県とエトリア=アカルナニア県を含む、ワイン生産が行われています。特にアッティカは古くからワインの産地として知られ、伝統的なスタイルのワインが多く生産されています。
歴史的背景
アテネは歴史上の重要な都市で、紀元前5世紀頃から発展しました。パルテノン神殿などが有名で、文化の中心地としても知られています。ワイン生産も古代から続く伝統的な産業の一つです。
気候と土壌
地勢が多様で、ブドウ栽培には適したエリアがあります。特にアッティカ地域では温暖で乾燥した気候が特徴で、ブドウにとって理想的な環境です。
主要ブドウ品種
- **白ブドウ**: サヴァティアノ、マラグジア
- **黒ブドウ**: アギオルギティコ、カベルネ・ソーヴィニョン
イオニア諸島
アドリア海に浮かぶ小さな島々で、特にケファロニア島が重要なワイン生産地です。イオニア諸島のワインは、地中海の影響を受けた多様な風味が特徴です。
歴史的背景
過去にはさまざまな支配者の下にあり、文化の影響を受けてきました。この地域のワイン文化も、古代から続く歴史の一部です。
土壌と気候
気候は多様で、土壌もさまざまな特徴を持っています。これにより、ワインの多様性が生まれ、有名なアペラシオンにもつながっています。
主要ブドウ品種
- **白ブドウ**: ロボラ、モスカテラ
- **黒ブドウ**: マヴロダフネ
代表的なP.D.O.ワイン
- **ロボラ・オブ・ケファロニア**: フレッシュな白ワインで、果実味が豊かです。
- **マスカット・オブ・ケファロニア**: 甘口の白ワインで、デザートワインとして楽しまれています。
- **マヴロダフネ・オブ・ケファロニア**: 赤のフォーティファイドワインで、特に濃厚な味わいが特徴です。
ペロポネソス半島の概要
ギリシャ本土の最南端に位置するペロポネソス半島は、多くの高品質ワインの産地があり、近年注目を集めています。この半島の主要都市はパトラスで、カラマタやコリントスを含む多くの歴史的な都市が存在します。また、この地域には赤ワインの重要産地であるネメアがあり、ここで生産されるワインは独特の風味を持っています。ペロポネソス半島は、特に高品質な赤ワインや白ワインが有名で、それぞれの地域で異なる特徴を持つワインが楽しめます。
歴史背景
ペロポネソス半島は、古代からの長い歴史を背景に持ち、世界遺産に登録されているアポロ・エピクリオス神殿やエピダウロス、ミケーネ遺跡といった遺跡が点在します。中でも、中世にはマルヴァジアのワインが世界中に輸出され、多くの国で人気を博しました。近代に入ってからは、第二次世界大戦後にパトラ、マンティニア、ネメアが主要産地として発展し、それぞれ特徴的なワインが生み出されています。
気候と風土
ペロポネソス半島はコリントス地峡を挟んでギリシャ本土と繋がっています。この地域の気候は、海岸部が地中海性気候であり、夏の最高気温は約30度まで達します。特に中央部のマンティニアでは、早くからオーガニック栽培が取り入れられており、持続可能な農業が進められています。また、ネメア地域は海抜が高く、昼夜の温度差が大きいため、豊かな味わいを持つ赤ワインが生まれます。
- 気候: 地中海性気候、夏の最高気温は約30度
- ブドウ栽培面積: 12,077ha
- ブドウ生産量: 119,548t
主要ブドウ品種
ペロポネソス半島の主要なブドウ品種は以下の通りです。
- 白ブドウ: モスホフィレロ、ロディティス、アシルティコ、モネンヴァシア
- 黒ブドウ: アギオルギティコ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、シラー
主要なP.D.O.ワイン
ペロポネソス半島における主なP.D.O.ワインについて、以下のような特徴があります。
Nemea P.D.O.
・アギオルギティコ単一品種から造られ、果実味豊かで力強い赤ワインです。ギリシャで最大の栽培面積を誇り、重要な赤ワインの産地となっています。標高によって個性が異なり、特に標高600m以上のエリアは質の高いワインを生み出します。地元のもう一つの名物として、「ヘラクレスの血」とも称されることがあり、神話にも深く根ざしています。
Mantinia P.D.O.
・マンティニアでは、冷涼な環境でモスホフィレロを中心に果皮のピンク色をしたワインを醸造しています。フラワリーなアロマと新鮮なフルーツの香りが特徴で、アペリティフとして非常に人気があります。軽やかで飲みやすいスタイルは、特に夏に適しており、国際品種とのブレンドも増えつつあります。
Patras P.D.O.
・パトラス周辺では辛口白ワインが主体で、特にロディティス種が香り高い白ワインを生み出しています。ここには甘口ワインのP.D.O.も存在し、その中でも以下のような特徴を持つワインがあります。
- Muscat of Patras P.D.O.: 酒精強化ワインでデザートとして楽しむことができます。
- Mavrodaphne of Patras P.D.O.: 黒ブドウのマヴロダフネから造られる甘口ワインで、複雑で深い香りが特徴です。
- Monemvassia Malvasia: マルヴァジアの甘口ワインとして名高く、歴史的な背景を持つ魅力的なワインです。
エーゲ海の島々の概要
エーゲ海は、北部と南部の島々に分かれ、サントリーニ島やレスボス島が主要な産地です。エーゲ海地方では、マスカット種を使った甘口ワインが有名で、特にサントリーニ島が生産するアシルティコワインは高い評価を受けています。
エーゲ海の歴史
紀元前5000年頃からエーゲ海の島々は交易の拠点となり、ワインは重要な商材とされてきました。特に甘口ワインは高価な取引品となり、様々な文化が交錯する中でその人気を博しました。
エーゲ海の気候とワイン生産量
エーゲ海北部は地中海性気候で、南部は乾燥した気候環境が特徴です。特にサントリーニ島では、強風と少ない降水量が独自のワインを生み出す要因となっています。この特殊な環境が、エーゲ海特有のテロワールを創造し、高品質なワインの生産を可能にしています。
- ブドウ栽培面積: 5,134ha
- ブドウ生産量: 24,176t
エーゲ海の主要なP.D.O.ワイン
ここでの主なP.D.O.ワインには以下のようなものがあります。
Santorini P.D.O.
・アシルティコを100%使用した辛口の白ワインで、火山性土壌が特徴です。非常に高い酸を持つワインが造られ、魚料理や軽い前菜と相性が良いとされています。
Muscat of Limnos P.D.O.
・甘口ワインを造っており、リムノス島で生産されます。フルーティーで香り高いスタイルが特長で、デザートワインとして非常に人気です。
クレタ島の概要
クレタ島はギリシャ最大の島であり、古代ミノア文明の発祥地でもあります。この地域には数多くのワイン生産地があり、特に地中海沿岸の豊かな土壌で育まれたブドウから高品質なワインが生まれています。
クレタ島の歴史と気候
クレタ島は紀元前2700年頃から文明が発展し、様々な文化が交錯しました。温暖な地中海性気候で、ブドウ栽培は主に北部の高地で行われ、そこで育まれるワインは特に注目されています。
- ブドウ栽培面積: 6,023ha
- ブドウ生産量: 59,955t
クレタ島の主要なP.D.O.ワイン
クレタ島の主なP.D.O.には以下があります。
Sitia P.D.O.
・リャティコ種を主体にした赤ワインを生産しています。このワインはフルーティーで飲みやすく、食事との相性も良いです。
Malvasia-Sitia P.D.O.
・天日干しのブドウから甘口白ワインや酒精強化ワインが生まれます。旨味が凝縮された味わいが特長です。
Dafnes P.D.O.
・リャティコから造られる赤ワインは長期熟成に適し、その深い味わいは多様な料理と楽しむことができます。
Archanes P.D.O.
・コチファリとマンディラリアから赤ワインが造られ、個性的なテロワールを反映しています。
まとめ
ペロポネソス半島、エーゲ海の島々、クレタ島はそれぞれ独自の歴史と土壌、気候条件を活かして高品質のワインを生産しています。特にP.D.O.ワインはその地域特有の風味を反映しており、興味が尽きない要素がたくさんあります。これらのワインは、ギリシャの豊かな文化と歴史を物語る重要な要素であり、世界中のワイン愛好者に愛されています。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。