日本 – 概論 | ソムリエ試験教本まとめ
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このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
日本の地理とワイン産業
日本は南北に細長い地形で、総面積は約3,780万ha(ドイツとほぼ同じ)。国土の75%が山間部で、平野部が少ないため、気候や地形の多様性がワイン産業に大きく影響を与えています。
- 国内のワイン産地はほぼすべての都道府県に分布。
- 主要産地は山梨県、長野県、北海道が上位3位を占める。
- ワイン用ブドウの栽培面積は約16,400ha(2022年)、収穫量は162,600t。
日本ワインの生産と市場
日本ワインの年間生産量は約15,073kl(約2,010万本)。赤ワインと白ワインの比率はほぼ半々で、赤ワイン41.8%、白ワイン47.0%。
- 主要産地:山梨県(6,534t)、北海道(3,950t)、長野県(3,924t)、山形県(2,107t)、岩手県(503t)。
- 国内のワイン流通量のうち、日本ワインのシェアはわずか4.4%に過ぎない。
日本ワイン産業の多様性
日本はワイン用ブドウの栽培地が北は北海道名寄(北緯44.1度)から南は沖縄県恩納村(北緯26.3度)まで広がり、約18度もの緯度差があります。
- 地形:標高900mを超える山間部から海岸近くの砂地まで多岐にわたる。
- 使用するブドウ品種:ヴィティス・ヴィニフェラ種(欧・中東系)、ヴィティス・ラブラスカ種、交配種、自生野生種など。
日本のワイン文化は多様な料理や文化を受け入れる国民性と共通し、品種や栽培環境の多様性が特徴です。
気候風土と栽培条件
日本の気候風土は地域によって大きく異なりますが、主に内陸性気候の地域でワイン用ブドウが栽培されています。
- 北海道:梅雨がなく降水量が少ない(4~10月の降水量704~731mm)。成育期間が短い。
- 山形県:内陸性気候で秋雨が少なく成育期間が長い。
- 長野県:4~10月の降水量約800mm。晴天が多いのが特徴。
- 山梨県:降水量約868mmで長野県と類似した気候。
- 九州(宮崎):降水量が多いが日照量が豊富。
日本のワイン産業の発展と課題
日本で本格的なワイン造りが始まったのは明治時代で、歴史は約150年と比較的浅いものの、2000年以降にワイナリーの増加が著しいです。
- 現在のワイナリー数は約453軒(2023年)。
- 生産規模の87%が年間生産量100kl未満の小規模ワイナリー。
- 海外原料への依存率が高く、国内製造ワインのうち約8割が海外原料に依存。
国内ワイナリーの多くは契約農家やJAとの提携に依存しており、原料ブドウの安定確保が重要な課題です。
日本へのブドウの伝来と各地への広がり
日本には元々東アジア系品種のヤマブドウやエビヅルなどが自生していましたが、15~16世紀には
シルクロードを経由して欧・中東系品種や交配品種(甲州など)が日明貿易を通じて伝来しました。
- 1549年:ザビエルが日本にブドウ畑がないことを記録。
- 1565年:ヴィレラ神父が野生ブドウの存在と京都でのブドウ栽培の可能性を記録。
- 江戸時代:京都、大阪、甲府などでブドウ栽培が拡大。
京都の曲直瀬道三による薬学書『本草』にブドウとワインが薬として紹介され、
日本でのブドウとワイン文化の起源となりました。
日本のワイン造りの歴史
室町時代後期から江戸時代にかけて中国から伝わったブドウと技法を基に、
ヴァン・ド・リキュールタイプのワインが作られ始めました。
- 1817年:市川で初めてアルコール発酵したワインが醸造される。
- 1870年:山梨で山田鶴教がワインの商業生産を開始。
- 明治時代に政府主導でブドウ栽培やワイン造りが全国に広がる。
しかし、フィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)などの病害により、欧・中東系品種の栽培は挫折しました。
近代から現代までの発展
大正時代には甘味ブドウ酒が主流となり、サントリーの赤玉ポートワインが人気を博しました。
一方、マスカット・ベーリーAなど日本独自の品種改良も進みました。
- 1931年:川上善兵衛がマスカット・ベーリーAを開発。
- 1940年:同品種を全国に普及。
- 1970年代:洋食文化の浸透に伴い、ワイン消費が急増。
平成以降、日本ワインの品質向上や地理的表示(GI) の指定が進み、山梨や北海道などが認定地域となりました。
また、1995年には田崎真也がソムリエコンクールで優勝し、日本のワイン文化が注目されるようになりました。
現代の日本ワインとその特徴
現在、日本のワイン市場では輸入ワインが大半を占めるものの、
国内でも「地名ワイン」の生産が活発化しています。地理的表示の基準に基づき、
地域特有のブドウを使用したワインが評価されています。
- 2013年:山梨県が地理的表示(GI)に指定。
- 2021年:山形県や長野県など新たに指定地域が拡大。
ワインツーリズムやセミナーなど消費者との距離も縮まり、地元産ワインの消費が促進されています。
日本のワイン法
日本におけるワイン関連の法律は、主に酒税法と酒類組合法によって規定されています。これにより、ワインの定義や分類、税率、ラベル表示の基準などが明確化されています。
酒税法の概要
- 酒類の定義: アルコール分1度以上の飲料。
- 酒類の分類:
- 発泡性酒類(ビール、発泡酒など)
- 醸造酒類(清酒、果実酒など)
- 蒸留酒類(焼酎、ウイスキー、スピリッツなど)
- 混成酒類(リキュール、甘味果実酒など)
- ワインの分類:
- 果実酒: 果実を発酵させたアルコール分20度未満の酒。
- 甘味果実酒: 果実酒に糖類や香味料を加えたもの。
酒類組合法の概要
- 酒類の表示義務や製法・品質表示基準を規定。
- 2015年、「果実酒等の製法品質表示基準」を制定。
- 2018年、ワインのラベル表示ルールが施行され、明確な区分と表示が義務化。
ワインのラベル表示規則
ワインのラベル表示は消費者が正確な情報を得られるようにするための規則で、以下のような区分が設けられています。
ワインの区分
- 日本ワイン: 国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒。
- 国内製造ワイン: 日本ワインを含む、日本国内で製造された果実酒および甘味果実酒。
- 輸入ワイン: 海外で製造されたワイン。
ラベル表示の要件
- 日本ワインのみ「日本ワイン」「地名」「品種名」「収穫年」を表記可能。
- 海外原料使用の場合、「輸入濃縮果汁使用」などの記載が義務。
地名の表示ルール
- 収穫地と醸造地が同一地域内である場合に限り、その地名を表示可能。
- 収穫地と醸造地が異なる場合は「収穫地名」や「醸造地名」を個別に記載。
品種と収穫年の表示ルール
- 品種表示: 使用量が85%以上の単一品種や複数品種を記載可能。
- 収穫年表示: 同一収穫年のブドウが85%以上の場合に記載可能。
地理的表示制度(GI: Geographical Indication)
地理的表示制度とは、特定地域で生産される商品の品質や特性がその地域に起因している場合に、独占的に地名を使用できる制度です。
日本の地理的表示(GI)ワイン産地
- 山梨(2013年指定): バランスの良いワイン。
- 北海道(2018年指定): 豊かな酸味と果実の香り。
- 山形(2021年指定): さわやかな酸味と余韻が特徴。
- 長野(2021年指定): 品種ごとの特性が明確なワイン。
- 大阪(2021年指定): デラウェアを主体とした新鮮なワイン。
GI指定の要件
- 産地に特有の酒類の特性があること。
- その特性を維持するための管理が行われていること。
管理機関の役割
- 原料・製法が基準に適合しているかを確認。
- 酒類の特性が地域特性に基づいているかを確認。
日本のブドウ品種
日本のブドウは多様で、主にアメリカ種群、東アジア種群、欧・中東種群に分かれています。これらの品種が1860年代からのワイン造りに影響を与えました。
- アメリカ種群: 約30種が存在し、寒さや病害に強い特徴があります。
- 東アジア種群: 約40種が確認され、日本固有の甲州を含みます。甲州は東洋的気候に適応しています。
- 欧・中東種群: ヴィティス・ヴィニフェラを代表とし、病害に弱いが高品質なワインを生む品種です。
日本ワインの歴史と重要人物
日本のワインの歴史は明治時代(1868年以降)に始まりました。当時、ブドウの栽培に困難が伴い、特にフィロキセラが影響しました。しかし、川上善兵衛の努力により、甲州やマスカット・ベーリーAなどの品種が生まれました。
ワイナリーと法律の整備
2010年、国際ぶどう・ぶどう酒機構(OL.V.)に甲州、マスカット・ベーリーA、山岩がワイン用ブドウとして認可され、EUへの輸出時に品種名を記載できるようになりました。
日本の主なワイン産地
- 山梨県: 95%の日本の甲州ワインが生産され、甲府盆地が中心です。
- 山形県: 質の高い甲州ワインを生産し、近年評価が上がっています。
- その他の地域: 北海道や長野県でも甲州や他の品種が栽培されています。
栽培技術と特性
日本では様々な栽培方法が採用されています。特に棚仕立てが主流で、X字型前定や一文字型短構前定が一般的です。甲州は果皮が厚く、全体の19.6%の醸造量を占めます。
ブドウ品種の特徴
- 甲州: 日本固有で、白ワインの原料として最も多い。
- マスカット・ベーリーA: 赤ワイン用として主力の地位を持つ。
- メルロー: 赤ワイン用として人気があり、長野県や山梨県で栽培されている。
日本のワイン産業は、様々な品種と栽培技術の発展により、近年国際的にも注目されています。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。