アメリカ – 概論 – 産地 (カリフォルニア以外) | ソムリエ試験教本まとめ
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目次
アメリカのワイン産業の概要
アメリカ合衆国は、総面積約985万km²の連邦共和国で、50州と1特別区から構成されています。2022年のデータによると、ブドウ栽培面積は393,272ha、ワイン生産量は28,469,206hlであり、国内ワイン消費量は約36,491,352hlと、現在のワイン消費国家の中でも特に重要な位置を占めています。特にカリフォルニア州は全生産量の約80%を占め、アメリカのワイナリーの約43%がこの州に存在しています。アメリカは世界第3位の人口を持ち、国内市場の拡大に伴い、ワイン生産も増加傾向にあります。
主要なワイン産地
アメリカには、以下のような主要なワイン産地があります。
- カリフォルニア州: 最も多くのワイナリーがあり、ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティなどが有名です。ここでは主に赤ワイン(カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデルなど)や白ワイン(シャルドネなど)の生産が盛んで、特にナパ・ヴァレーは高品質のワインの産地として国際的にも評価されています。
- オレゴン州: 冷涼な気候でピノ・ノワールやリースリングの生産が盛んな地域です。オレゴンは特に、エレガントなスタイルのピノ・ノワールで知られ、ワイン愛好家から高い評価を得ています。
- ワシントン州: コロンビア・ヴァレーがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロが生産されています。この州は多様な気候が特徴で、フルボディの赤ワインが特に人気です。
- ニューヨーク州: ハドソン川沿いや五大湖地域にて高品質のワインが造られています。この地域ではリースリングやピノ・ノワールが特に評価されています対して、リースリングは特に冷涼な気候で育てられたことによる酸味と甘味のバランスが絶妙です。
- ヴァージニア州: 品質の向上が見られる新興のワイン産地で、特に混合品種の赤ワインが注目されています。ヴァージニアは多様な土壌と気候条件を活かし、ユニークなワインスタイルを生み出しています。
アメリカのワイン製法
アメリカではテロワールに基づいた多様な製法が採用されています。特に近年では伝統的技術と革新的技術の融合に注目されており、温度コントロール装置付きのステンレススチール・タンクが導入され、発酵過程を最適化しています。また、コンクリートタンクや卵型タンクの使用が増えており、これがワインの品質向上に寄与しています。アメリカの製法は、ブドウの栽培から醸造まで独自のアプローチを重視し、テロワールの特性をワインに反映させることが重要視されています。
歴史的背景と重要な年号
アメリカのワイン産業は1492年にクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸発見から始まりました。その後、以下の重要な歴史的イベントがありました。
- 1776年: イギリスの13植民地が独立を宣言し、アメリカ合衆国が誕生。
- 1920年~1933年: 国家禁酒法が施行され、ワイン産業が大きな打撃を受ける。
- 1934年: 禁酒法が廃止された後、カリフォルニアでワインインスティテュートが設立され、ワイン生産が再び盛んに。
- 1976年: パリ・テイスティングでカリフォルニアワインが国際的に評価され、アメリカワインの地位が確立される。
原産地呼称法(A.V.A.)の詳細
アメリカの原産地呼称法は、特定の地理的・気候的条件に基づいたA.V.A.の設定により、地理的なエリア内で生産されたブドウの品質と特性を保障するものです。以下のポイントがあります。
- A.V.A.内で収穫されたブドウの利用割合は、A.V.A.名表示の場合は85%、畑名表示の場合は95%が必要です。これにより、消費者はその地域特有の品質や特徴を理解しやすくなります。
- 州名やカウンティ名表示には、75%以上のブドウ使用が求められ、これによって消費者は信頼できる情報にアクセスできます。
- フランスやイタリアのように、具体的な栽培・醸造方法は規定されていませんが、地域特性を活かしたワイン造りが奨励されています。
主なブドウ品種
アメリカのワイン生産に使われる主なブドウ品種は、以下の通りです。
- カリフォルニア州: シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデルなど、特にカベルネ・ソーヴィニヨンはフルボディのワインを生み出し人気を博しています。
- オレゴン州: ピノ・ノワール、リースリングが多く栽培されています。特にオレゴンのピノ・ノワールは、フレッシュな果実味とエレガントな味わいが特徴です。
- ニューヨーク州: リースリング、シャルドネが選ばれることが一般的で、特に冷涼な気候下で育ったリースリングは酸がしっかりとして評価されています。
コロナウイルスの影響と販売の変化
2020年から2021年にかけて、コロナウイルスの影響で家庭でのワイン消費が増加しました。しかし、2022年には9%減少しました。特にオンライン販売が急増し、Wine.comの売上は119%増加しました。これらの傾向は、消費者が直接販売やネット販売にシフトしていることを示しています。
- 2022年のダイレクト・シップメントは840万ケースと前年比27%増加。特に、消費者がインターネットを通じてワイナリーに直接注文できる機会が増えたことが背景にあります。
- 家庭での高級ワインの消費が増えており、100ドル以上のワインの販売が7.8%増加したことから、高級ワインの需要が増していることがわかります。
ワシントン州の概要
アメリカの北西部太平洋岸でオレゴン州とカナダの間に位置するワシントン州は、ワイン産地としての歴史は浅いものの、急速に成長しています。現在、アメリカのワイン生産量の約5.5%を占めており、主要産地としてはコロンビア・ヴァレー流域が挙げられます。この地域は太平洋に平行して走るカスケード山脈のレインシャドーのため、年間で温暖で乾燥した天候に恵まれ、ブドウ栽培に最適な環境を提供しています。州内には600以上のワイナリーが存在し、それぞれのワイナリーが多様なスタイルのワインを生産しています。
重要な品種と生産
ワシントン州の主要な栽培品種はリースリング、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどであり、合計で約70種以上のブドウが栽培されています。これらの品種はバランスが良く、ワインのクオリティは非常に高いと評価されており、特にリースリングは多様な表現を持つことで知られています。また、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロのブレンドは、全米でも高い人気があります。
製法と特徴
ワシントン州のワイン製法には、自然の気候を活かした適切な灌漑技術が含まれています。多くのワイナリーでは、レインシャドーの影響を受けた乾燥した環境の中で高品質のワインが生産されており、近年では手法としてマイクロ・クライメットを利用したブドウ栽培が注目されています。このような方法で製造されたワインは、土壌や気候の特性が活かされており、特にミネラル感が際立っているものが多いです。
歴史的背景
ワシントン州には19世紀からワイン用ブドウ畑が開かれるようになりましたが、本格的な産業化が始まったのは1903年の大規模な灌漑プロジェクト以降です。禁酒法(1920年に施行)により一時衰退しましたが、撤廃後の1967年にはChateau Ste Michelleが設立され、近代的なワイン醸造技術が導入されました。このワイナリーは、ワシントン州のワイン産業をリードする存在となり、様々な地元のブドウを使ったユニークなワインを生み出しています。
アペレーションと原産地呼称
ワシントン州には多くのA.V.A.(アメリカン・ヴィンヤード・アペレーション)が存在します。コロンビア・ヴァレーはその代表的な地域であり、州内のワイン用ブドウ生産量の90%を生産しています。コロンビア・ヴァレーの特徴として、湿度が低く、昼夜の気温差が大きいことが挙げられ、この気候が高品質なブドウを育てる要因となっています。その他にも、Yakima ValleyやWalla Walla Valleyなどがあり、これらの地域はそれぞれ異なる気候や土壌を活かして特有のスタイルのワインを生産しています。
- コロンビア・ヴァレーA.V.A.: 1984年に認定され、面積は350万haで、州のワイン生産の大部分を支えている。
- Yakima Valley A.V.A.: 1983年にワシントン州で初めて認定されたA.V.A.で、は多様なブドウが栽培されている。
- Walla Walla Valley A.V.A.: 1850年代からの歴史を持ち、特にシラーとカベルネ・ソーヴィニョンが評価されている。
オレゴン州と合わせて、これらのアペレーションはそれぞれの気候や土壌によって特徴が異なるため、各ワイナリーが独自のテロワールを持ったワインを生産しています。
ワインの評価と経済効果
ワシントン州のワインは世界的に高い評価を受けており、2020年のワイン産業及び周辺産業への経済波及効果は86億ドルに達しました。州内には約1,100以上のワイナリーが存在し、観光産業にも大きく寄与しています。多くのワイナリーでは、地元の農産物を活かした料理と共に、自社のワインを楽しむことができるので、観光客にとって大変魅力的な地域となっています。
オレゴン州の概要
オレゴン州は、冷涼な気候から高品質なピノ・ノワールを生産することで知られ、現在、栽培面積の約59%がこの品種に占められています。2020年のオレゴンワインの販売量は約470万ケースで、国内外の市場でも好評です。
アペラシオンの法
オレゴン州のワイン法は、特に厳しいラベル表示が求められ、ブドウ品種名は90%以上の使用が必要です。産地名の表記に関しては、カウンティ名やA.V.A.名も当該ブドウを最低95%使用する必要があります。これにより、消費者に対して信頼性の高いワイン情報を提供しています。
サステイナビリティに関する取り組み
オレゴン州では環境保護の意識が高く、サステイナブル・ワイナリーやオーガニック認証を受けている生産者が数多く存在します。このような取り組みは州全体のワイン生産において重要視されており、全体の約47%がこうした認証を受けています。
主要なワイナリー名と生産者名
- Chateau Ste Michelle: ワシントン州の主導的生産者で、特にリースリングとカベルネ・ソーヴィニョンが評価されている。
- David Lett: オレゴン州で初のピノ・ノワールを栽培した生産者で、名声を確立した。
料理と食材
ワシントン州では、地元の豊富な農産物が地産地消され、新鮮な魚介類や肉が好まれています。特に、シーフード料理や地元の野菜を主要とした料理が人気であり、ワインとのペアリングが楽しめる多様なレストランが多くあります。
気候と土壌の影響
ワシントン州の気候はカスケード山脈の影響を受け、特にコロンビア・ヴァレーは年間降水量が少なく乾燥した環境で、ブドウ栽培に必要な河川が豊富です。土壌は多岐にわたりますが、特に玄武岩がワインのミネラル感を支えています。このような多様な気候条件と土壌特性により、ワシントン州のワインは個性的な味わいを持つものが多いです。
ニューヨーク州のワイン産業
ニューヨーク州は、東はロング・アイランドから西はペンシルバニア州との境界までを含む約800kmの広さを誇る多様なワイン産地を有しています。ワイン用のブドウ品種は、早ければ17世紀の中頃にオランダ人によって導入され、特にマンハッタン付近に初めてブドウが植えられました。今日では、ニューヨーク州はアメリカで最も多様なワイン生産地の一つとされ、多くの品評会で高い評価を受けています。
収穫量と気候の影響
- 2021年: ニューヨーク州全般で収量が高かったが、気候の変動が影響を及ぼすことも多い。
- 2022年: 降雨量が少なく、高温乾燥の気候の影響で、ほとんどの品種で収穫量が減少。収穫時のブドウは小粒で果皮の比率が高くなり、凝縮度の高いワインが生産される傾向。
主要なアペラシオンとその特徴
- ロング・アイランド A.V.A.:
- メルロ、カベルネ・フラン、シャルドネなど多様な品種が栽培され、特にボルドー系品種の評価が高いことが特徴として挙げられます。
- 温暖な気候がブドウ栽培に適しており、長い成育期を持つため、品質の高いワインが生まれています。
- フィンガー・レイクス A.V.A.:
- リースリングやシャルドネが主に栽培されており、アイスワインやスパークリングワインなども高品質で評価されています。
- 湖の近くという特性から、気候が穏やかで、ブドウ栽培に最適な環境を提供しています。
- ハドソン・リヴァー・リージョン A.V.A.:
- アメリカにおける商業ワイン生産の最も古い地域の一つで、複数の耐寒性のある交配品種が栽培されています。シャルドネやカベルネ・フランなども見られます。
ヴァージニア州のワイン文化
ヴァージニア州は、アメリカ合衆国東部に位置し、州都はリッチモンドです。ブドウ栽培は歴史的に試みられてきましたが、特に1820年代に「ノートン」品種が高品質なワインを生み出すようになり、地元のワイン文化の形成に貢献しました。
アペラシオンとその法
ヴァージニア州には多様な A.V.A. (American Viticultural Areas) が存在します。特にモンティチェッロ A.V.A.は1984年に認定され、豊かな土壌と良好な日照条件が特徴です。ノートン品種が特に評価されており、その人気が再燃しています。
主要なワイナリーと生産者
- ドクター・コンスタンティン・フランク: フィンガー・レイクス地区でのヴィティス・ヴィニフェラを使ったワイン造りの先駆者。
- トランプ・ワイナリー: ジェファーソンの夢を引き継ぎ、高品質な赤ワインを生み出している。
ヴァージニアの主要ブドウ品種と栽培面積
- 黒ブドウ: カベルネ・フラン、メルロ、ノートンなど。
- 白ブドウ: シャルドネ、ヴィオニエなどが有名で、これらの品種を用いたワインが高く評価されています。
- 2022年のブドウ栽培面積は約1,895ha、ワイン生産量は107,122hLと報告されています。
ワイン産業の経済効果
ニューヨーク州のワイン産業は、年間66.5億ドルの経済効果を持ち、観光業での重要な役割を果たしています。さらに、ヴァージニア州もワインによる観光収入が重要であり、州内各地でワイナリー巡りが人気を博しています。
ワインの種類とその評価
- ニューヨーク州では、リースリング、シャルドネ、カベルネ・フランなどが主な品種で、特にアイスワインやスパークリングワインが国際的に高く評価されています。
- ヴァージニア州では、プティ・ヴェルドやタナを使ったボルドー・ブレンドの赤ワインが注目を集め、独自のスタイルを確立しています。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。