ワイン概論 | ソムリエ試験教本まとめ
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このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験対策のまとめをしています。最新のソムリエ教本の要点をまとめていますので、問題集と合わせてご活用ください。
目次
日本における酒類の定義
酒税法第2条によると、酒類とはアルコール分1度以上の飲料を指します。アルコール分は、温度15度のときに容量100分のエタノール量で定義されます。
酒類は以下のように分類されます:
- 発泡性酒類 (ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)
- 醸造酒類 (清酒、果実酒など)
- 蒸留酒類 (ウイスキー、焼酎、スピリッツなど)
- 混成酒類 (リキュール、甘味果実酒など)
ワインとは
ワインはブドウを原料として醸造した酒類で、ブドウの糖分によりデンプンの糖化工程が不要です。ブドウの品種と栽培地が商品の名称に影響を与えます。
- ブドウには糖度が高く、発酵でアルコールを十分に生成します。
- 有機酸が豊富で、雑菌が生えにくい。
ワインの歴史と普及
ワインの起源はコーカサス地方とされ、地中海地域に広がりました。地中海文化やキリスト教儀式で重要な役割を果たし、修道院でワイン造りが発展しました。
ヨーロッパ以外ではチリ、アルゼンチン、カリフォルニアなどで生産が盛んです。
ワインの特徴
ワインは他の酒類にはない独自の特徴を持っています。
- ブドウの個性がそのまま反映される: 品種、原産地、収穫年の気候が重要。
- 酸味が特徴: 酒石酸やリンゴ酸など、有機酸が豊富で低いpH。
- 香味の多様性: 第1アロマ(ブドウ由来)、第2アロマ(発酵由来)、第3アロマ(熟成由来)が形成。
- 料理との相性が広い: 酸やタンニン分が特徴的で、料理の味を引き立てる。
- 健康効果: ミネラルや抗酸化物質(ポリフェノール、レスベラトロール)が豊富。
ワインの分類
ワインは醸造法や品質で分類されます。
- 醸造法:
- スティル・ワイン: 発泡性がなく、一般的な赤・白・ロゼワイン。
- スパークリングワイン: 発泡性を有する。例: シャンパーニュ。
- フォーティファイド・ワイン: アルコール添加で発酵を停止。例: ポート、シェリー。
- フレーヴァード・ワイン: 薬草や果実を添加。例: ヴェルモット。
- 品質:
- 日常消費用: 生産量が多く手頃な価格。
- 優良ワイン: 品種や産地が指定され、規制が厳しい。
健康に関する注意点
適量のワイン摂取は健康に寄与しますが、大量飲酒は健康リスクを増大させます。適量は1日平均アルコール20g程度で、グラス2杯のワインが目安です。
EUにおけるワイン規則の背景
1962年、欧州共通市場制度がワインの生産過剰問題を解決し、安定供給を実現するために導入されました。2008年には新しいワイン共通市場制度が施行され、品質分類やラベル表記に関する規則が改定されました。
品質分類
ワインは以下の2種類に大別されます。
- 地理的表示付きワイン: 特定地域の特性に基づく品質を持つ。
- 地理的表示のないワイン: 一般的な消費用。
地理的表示付きワインはさらに以下に分けられます。
- A.O.P. (原産地呼称保護):
- 品質と特徴が特殊な地理的環境に起因。
- 指定地域内で栽培・醸造。
- ヴィティス・ヴィニフェラ種のブドウのみ使用。
- I.G.P. (地理的表示保護):
- 指定地域で栽培されたブドウを85%以上使用。
- ヴィティス・ヴィニフェラ種または交雑種が原料。
ラベル表記
2009年施行の規則により、以下の項目がラベルに記載されます。
義務記載事項
- 製品のカテゴリー (例: ワイン、V.D.L.)
- A.O.P.またはI.G.P.の表記と名称
- アルコール度数
- 原産地
- 瓶詰業者名 (スパークリングワインの場合は生産者と販売業者)
- スパークリングワインの残糖量 (例: Brut Nature, Extra Dry など)
任意記載事項
- 収穫年 (使用ブドウの85%以上がその年の収穫物である必要あり)
- ブドウ品種名 (表示する場合は85%以上がその品種を使用)
栽培地域のゾーン区分
EUでは地域特性に基づき栽培地域をゾーン別に分け、補糖や補酸などの規定を設定しています。主なゾーンは以下の通りです。
- Zone AA: ドイツ
- Zone B: フランス(ロワール、アルザス、シャンパーニュ)
- Zone C-I: フランス(ボルドー、ブルゴーニュ)、イタリア北部、スペイン
- Zone C-II: フランス南部、イタリア、スペイン
- Zone C-III(a): ギリシャ、キプロス、ブルガリアの一部
- Zone C-III(b): 南イタリア、スペイン南部、ポルトガルなど
主要な気候区分
ワイン生産地は以下の主要な気候区分に影響を受けます。
- 大陸性気候: 昼夜の気温差が大きい。ブルゴーニュや東ヨーロッパが該当。
- 海洋性気候: 気温の日較差が小さく降水量が多い。ボルドーやクナワラが該当。
- 地中海性気候: 夏は乾燥し日照が多く、冬は穏やかで降水量が増える。南フランス、スペインなど。
- 山地気候: 標高の高い地域。長野、ジュラなど。
ブドウの品種
ブドウは、ブドウ科 (Vitaceae) のブドウ属 (Vitis) に属する冬季落葉性のつる性植物です。主な品種とその特徴は以下の通りです。
- ヴィティス・ヴィニフェラ種: 中近東原産。ワイン醸造に最適。乾燥地に強い。
- ヴィティス・ラブルスカ種: 北米原産。湿気に強く、独特の香り (Foxy flavor) を持つ。
- ヴィティス・アムレンシス種: 東アジア原産。山ブドウが含まれる。
交雑により生まれた品種には、デラウェア や マスカット・ベーリーA などがあります。世界で栽培されるワイン用ブドウの多くはヴィティス・ヴィニフェラ種に属し、100種程度が実際の醸造に使用されています。
ブドウの生育と環境
ブドウの生育は、気温・日照・水分・土壌・標高といった環境条件に強く依存します。
主な生育条件
- 気温: 年平均気温 10-16 ℃ が最適。日中と夜の温度差がある地域が望ましい。
- 日照: 生育期間中に 1,000-1,500 時間の日照が必要。
- 水分: 年間降水量 500-900 mm が理想。過剰な湿気は病害を促進する。
- 土壌: 保水性と排水性のバランスが重要。砂質土壌が適しています。
- 標高: 標高 100 m ごとに気温が 0.6 ℃ 低下。高標高地は冷涼な気候を提供します。
ブドウの栽培方法
ブドウ樹の栽培方法は、土地や気候、栽培目的に応じて異なります。
仕立て方法
- 垣根仕立て: 垂直に新梢を伸ばす方法。ボルドーやブルゴーニュなどで採用。
- 棚仕立て: 果実が棚の上で広がる方法。日本や日差しの強い地域で一般的。
- 株仕立て: 樹をコンパクトに保つ方法。南フランスやスペインで見られる。
- 棒仕立て: 急斜面向きの方法。モーゼルなどで使用。
病虫害と対策
ブドウは多くの病害虫の影響を受けるため、防除が重要です。
主な病害
特別な栽培方法
有機農業 (Organic Agriculture)
化学肥料や農薬を使用せず、遺伝子組換え技術も使用しない農法。日本では「有機 JAS 規格」に基づき認証されています。
有機ワイン (Organic Wine)
有機農業によるブドウを原料とし、醸造過程でも規定に合致したもの。EU では 2012 年から「vin biologique」として認証可能になりました。
バイオダイナミック農法 (Biodynamic Farming)
月や惑星の動きに基づく農事暦を活用する循環型農法。Demeter が主な認証団体です。
減農薬栽培 (Lutte Raisonnée)
農薬使用を必要最低限に抑える栽培法。フランス語で「合理的な戦い」を意味します。
スティル・ワインの醸造とは
スティル・ワインの醸造は、酸化防止、アルコール発酵、マロラクティック発酵、熟成などの工程を経て、ワインを製造する過程です。
亜硫酸の役割
- 亜硫酸(二酸化硫黄)は酸化防止と酵母・細菌の抑制のために使用。
- 主に以下の形態で存在:
- 活性型亜硫酸:酸化防止力が最も高い。
- 遊離型亜硫酸:酒質管理に重要。
- 結合型亜硫酸:他の成分と結合した状態。
- 適切な濃度(白ワイン0.8ppm、赤ワイン0.6ppmの活性型亜硫酸)が品質維持に重要。
酵母によるアルコール発酵
- 主要な酵母:Saccharomyces cerevisiae。
- 発酵により糖分がエタノールと二酸化炭素に分解。
- 市販の培養酵母(乾燥酵母)や野生酵母が使用される場合もある。
マロラクティック発酵
- リンゴ酸を乳酸に変換し、酸味を柔らかくする発酵。
- 代表的な乳酸菌:Oenococcus oeni。
- マロラクティック発酵によりワインの味わいがまろやかになり、微生物安定性が向上。
熟成と容器
- ステンレスタンク:
- 酸素接触が少なく温度管理が容易。
- 赤・白どちらにも使用される。
- 木樽:
- オーク材が主流。ワインにタンニンや香りを付与。
- 熟成中、木目を通して穏やかに酸素と接触。
- トーストの度合いでワインの風味が変化。
- コンクリートタンク:保温性が高く殺菌しやすい。
赤ワインの醸造のポイント
白ワインの醸造のポイント
- 黒ブドウも使用可能(色素抽出を最小限に抑える)。
- スキンコンタクトで果皮の香り成分を抽出することも。
- 発酵温度は赤ワインより低く20℃前後。
ロゼワインとオレンジワイン
その他の製法
スパークリングワインの製法とは
スパークリングワインは、二酸化炭素を含有し、炭酸ガス圧が3.5bars以上のものを指します。製法によりワインの特徴が大きく異なります。
主なスパークリングワインの製法
1. トラディショナル・メソッド(Méthode Traditionnelle)
- 瓶内で二次発酵を行う方式。
- フランスのシャンパーニュ、スペインのカヴァ、イタリアのメトド・クラシコがこの製法。
- 特徴:
2. シャルマ方式(Méthode Charmat)
- 密閉タンクで二次発酵を行う方式。
- 短期間で大量生産が可能。
- マスカットやリースリングなど、アロマを活かしたスパークリングワインに適している。
3. トランスファー方式(Méthode de Transfert)
- 瓶内で二次発酵させたワインを加圧下でタンクに移し、新しい瓶に詰め替える方式。
- トラディショナル方式の一部工程を簡略化。
- フランスやアメリカで採用されている。
4. その他の製法
- アンセストラル方式(Méthode Ancestrale):
- 発酵途中のワインを瓶に詰め、瓶内で発酵を続ける。
- 例:クレレット・ド・ディー、ガイヤック。
- 炭酸ガス注入方式:
- ワインに炭酸ガスを直接注入する方式。
- 手軽に製造できるが、自然な発酵によるスパークリングとは異なる。
ロゼワインのセニエ法
- 黒ブドウの果汁を一部引き抜き発酵させてロゼワインを製造。
- 発酵開始前に引き抜くと淡い色、発酵途中に引き抜くと濃い色になる。
その他の特別な製法
マセラシオン・ア・ショー(Maceration à chaud)
- 加熱により果皮から色素やタンニンを抽出。
- 軽やかで色鮮やかな赤ワインに仕上がる。
クリオ・エキストラクシオン(Cryo-extraction)
- 冷凍したブドウを圧搾して糖度の高い果汁を得る。
- 主に甘口ワインの製造に使用される。
ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygenation)
- 貯蔵中の赤ワインに微量の酸素を吹き込む技術。
- 色素の安定化や口当たりの柔らかさを向上させる。
安定化処理
清澄化処理(Clarification)
- ワイン中の浮遊物を取り除き透明度を向上。
- 使用される清澄剤:ベントナイト、卵白、カゼインなど。
冷却処理(Cold Stabilization)
- 酒石の析出を防ぐため、低温で一定期間保持。
- 軽めの処理がワインの味わいを残す点で推奨される。
濾過(Filtration)
- 細かい浮遊物や酵母を除去。
- フィルターのポアサイズがワインの味わいに影響。
包装工程と酸素管理
- 酸素管理の重要性:
- 溶存酸素(DO)やヘッドスペース酸素(HSO)を管理し、酸化を防ぐ。
- 総酸素量(TPO)を低く保つことで、品質を安定化。
- クロージャーの種類:
- 天然コルク、合成コルク、スクリューキャップなどが使用される。
- スクリューキャップは酸素透過性が低いため、酸化を抑えられる。
記憶が新鮮なうちに、練習問題を解きましょう。覚えてアウトプットをしての繰り返しで記憶は定着してゆきます。