二次試験とは
このサイトではソムリエ・ワインエキスパートの二次試験について解説していきますが、解説を行う前にまず、テイスティング試験とは何か、テイスティング試験にどのような意味があるのか、ということを考えていきましょう。
二次試験概要
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験では、ワインやその他の酒類のテイスティング課題が課せられます。二次試験の概要は以下のとおりです。
- ソムリエ (制限時間40分)
- ワイン : 3杯
- その他の酒類 : 2杯
- ワインエキスパート (制限時間50分)
- ワイン : 4杯
- その他の酒類 : 1杯
このうちワインのテイスティング試験の内容は、受験者の前にそれぞれ差し出された未知のワインについて、外観、香り、味わい、総評を与えられた選択肢からマーク形式で答え、最後にそのワインの品種、産地、ヴィンテージを答えるというものです。
このような、事前に何の情報を持たずにワインを味わい、香りなどの特徴からそのワインの品種や産地を当てるテイスティング方法を、ブラインドテイスティングと呼びます。
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験では、外観や香り、味わい、総評、そして品種、産地、ヴィンテージの項目についてそれぞれ配点が振られており、受験者はそれぞれ適切と思うものを選んでゆき、一定数以上の点数をとると合格です。
二次試験の意義
ソムリエ・ワインエキスパート試験の近年の傾向で注目すべき点は、品種、産地、ヴィンテージの配点は下がり、逆に香りや味わいの配点が上がったということです。つまり、品種を全て間違えてしまったとしても十分に試験に合格する可能性があり、逆に品種をすべて当てても必ずしも受かるというわけではなくなったということです。
これは、ソムリエ・エキスパートの二次試験は、ただ単にワインの品種当てゲームではなくなってきたということです。この傾向はどう解釈したらよいのでしょうか。
ここで原点に立ち返って、そもそもソムリエとはどのような職業かを考えてみましょう。日本ソムリエ協会のホームページでは、ソムリエの定義は以下の通りに記載されています。
ソムリエとは飲食、酒類・飲料の仕入れ、管理、輸出入、流通、販売、教育機関、酒類製造のいずれかの分類に属し、酒類、飲料、食全般の専門的知識・テイスティング能力を有するプロフェッショナルを言う。ソムリエの役割は、飲食店もしくは酒類・飲料を販売する施設におけるそれらの提供、ならびに商品の適切な紹介とサービスを中心に、啓蒙・普及・研究・教育を目的とした専門的なアドバイスや清潔で衛生的な食事環境の維持など広範に及ぶ。
https://www.sommelier.jp/
この定義から分かる通り、ソムリエの役割の中心の一つとしてあげられているのが、飲食店での酒類・飲料の適切な紹介です。みなさんも、飲食店でソムリエの方にワインの紹介をされたことがあると思います。
ラズベリーを思わせるフレッシュな果実の香りに、活き活きとした酸味が特徴的な…、などの思わず唾が湧いてくるような表現でソムリエの方はワインを紹介してくれます。このように、ソムリエの方は、お客様に楽しんでもらえるように、ワインを正確にかつわかりやすく表現をしなければなりません。
このことから、ソムリエ・ワインエキスパート二次試験は、酒類・飲料の適切な紹介を行う能力を問うていると考えられます。逆に言えば、 ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験の対策を適切に行い、スキルをきちんと身につければ、 お客様へ酒類・飲料を適切に紹介できるようになるということです。
さて、酒類・飲料を適切に紹介するために必要なスキルとはなんでしょうか。それが、テイスティングコメントと呼ばれるものですです。
テイスティングコメントの必要性
お客様にワインを紹介するときに必要なスキルは、そのワインの特徴をいかに適切にわかりやすく言語化するかです。
ただこれはやはり技術と経験が物言う世界であり、一朝一夕で為せる業ではありません。
しかし、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験では、ワインを魅力的に紹介するためのテンプレート的表現を用意してくれており、それらのコメントを使用すると自然とワインを魅力的に表現することができるのです。さて、ではそれらのコメントはどのように使われるのでしょうか。
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験で出てくる一つ一つの表現は、このようなタイプのワインにはこの表現、あのようなタイプのワインにはこの表現と、ワインのタイプに対して使用すべき表現の暗黙のルールが決められています。そのルールを学び、それらに従いながらワインを描画すれば、自然と垂涎を促すテイスティングコメントを作ることができるのです。
二次試験は言わば、ワインを魅力的に表現するための教材であると考えることもできるのです。
このサイトでは、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験で使われる表現の「規則」を解説しながら、ワインを正しく魅力的に表現できるよう、そしてワインをさらに楽しんでいただけるようなヒントを記載していきたいと思っていますので、ぜひ以降のページも御覧ください。
Chateau Favray Pouilly Fume
フランス、ロワール、プイィ・フュメのソーヴィニヨン・ブランを、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験に出てくるテイスティングコメントのみを用いて紹介してみましょう。
外観は緑がかったレモンイエローで、若々しさを感じます。柑橘や青りんごの果実の香りに、貝殻や石灰などのミネラル感、そしてアニスやヴェルヴェーヌのアクセントが加わります。香りは若々しく華やかな印象です。アタックはやや強く、爽やかな酸が溌剌とした印象を与えます。穏やかな苦味は長い余韻を作り上げており、全体的にエレガントでミネラリーな一本です。