外観の印象
外観の印象とは
ここまでのプロセスで、ワインの外観の情報から清澄度、輝き、色調、濃淡そして粘性を読み取ってきました。
そしてそれらの項目は、そのワインに関しての様々なヒントを与えてくれることを学びました。
最後は、それら外観の情報から、ワインの印象、すなわちワインの成熟度と熟成度を判断します。
成熟と熟成
成熟と熟成、漢字を逆転させただけで似たように見える単語ですが、これら二つは大きく異る意味を表します。
成熟とは
ぶどうはヴェレゾン(色づき期)をすぎると、酸を減らし、糖分やフェノール類を蓄積させます。それらの蓄積と同時に、白ぶどうは緑色を穏やかな色に変え、赤ブドウは色を赤色に変化させます。
このように、ぶどうの実が十分に成長することを成熟と呼びます。
ぶどうの成熟には二種類あることが知られています。糖類の成熟とフェノール類の成熟です。フェノール類の成熟は、生理学的成熟や風味の成熟とも呼ばれます。
糖類の成熟は、気候に大きく左右されることが知られています。温暖な地域では糖類は早く成熟します。
反対に、フェノール類の成熟は気候の影響をほとんど受けないことが知られています。そのため温暖な地域だと、フェノール類が十分に成熟しないまま糖類が成熟しきってしまうということがあります。フェノール類の成熟を待ってしまうとぶどうに必要以上の糖類が蓄積されてしまい、アルコール度数がかなり高いワインになってしまいます。
ワイン造りでは、糖類の成熟とフェノール類の成熟の両方のバランスが重要になってきます。
熟成とは
発酵を終えたワインは、そのまますぐに飲まれることはまれで、普通は瓶や樽などに入れられ人に飲まれるまで安置されます。その間、ワインは酸素と触れ合ったり、樽からワインへの成分の溶け込みがあったりと、ワインはその組成を変化させます。このように、ワインを寝かせてその成分を変化させる工程を熟成と呼びます。
ワインは熟成中に様々な変化をします。
樽や瓶内での熟成中、ワインは時間をかけて酸素とふれあいます。そのため、熟成はゆっくりとした酸化作用とも呼べます。この穏やかな酸化作用により、白ワインは色を黄色や褐色に、赤ワインは色をオレンジ色に変化させます。
また、熟成を経ると赤ワインのタンニンは円みを帯びることが知られています。これは、熟成中に赤ワイン中のタンニンが重合していくことに起因します。タンニンは重合度が高くなるほど渋味が穏やかになることが知られています。
外観から判断する成熟度と熟成度
それでは、外観の情報からどのように成熟度と熟成度を判断するのでしょうか。
成熟度
成熟度は、主にワインの濃淡と粘性から判断します。
ぶどうの成熟度が高いと、つまりフェノール類が多く蓄積していると、ワインの色は濃くなることが知られています。また、糖類が十分成熟したぶどうから作られるワインは、アルコール度数や糖度が高くなります。これによりワインの粘性も高くなります。
ワインの色が濃く、粘性が高いほど、そのワインは成熟していると判断できます。
熟成度
熟成度は、主にワインの色調から判断します。
熟成は穏やかな酸化反応であり、酸化に伴い白ワインは緑を帯びた色調から黄色や褐色に、赤ワインは紫の色調からオレンジがかった色調に変化します。
また、ワインは熟成に伴い輝きを落ち着かせ、深みのある色に変化していきます。そのため、輝きも熟成度を判断する情報になります。
外観の印象の表現
ソムリエ・ワインエキスパート試験において、外観のを表現する単語として以下が挙げられています。白ワインと赤ワインで使われる単語が若干違うことに注意してください。
- 白ワイン
- 若々しい
- 軽快な
- 成熟度が高い
- 濃縮感のある
- やや熟成した
- 熟成した
- 酸化熟成のニュアンス
- 酸化が進んだ
- 完全に酸化している
- 赤ワイン
- 若々しい
- 若い状態を抜けた
- 軽快な
- 成熟度が高い
- 濃縮感が強い
- やや熟成した
- 熟成した
- 酸化熟成のニュアンス
- 酸化が進んだ
- 完全に酸化している
この中で、「軽快な」「成熟度が高い」「濃縮感が強い」はワインの成熟度を表す表現で、成熟度の高い順から以下の通りに使用されます。
濃縮感が強い > 成熟度が高い > 軽快な
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験において、白ワインは「軽快な」「成熟度が高い」が模範解答としてよく選ばれています。色が淡く粘性が低いワインでは「軽快な」、色がやや濃く粘性が高いワインでは「成熟度が高い」が模範解答として選ばれています。
赤ワインは、「成熟度が高い」が模範解答としてよく選ばれています。色が濃く粘性が高いワインは「濃縮感が強い」も別解として選ばれることがあります。
「若々しい」「若い状態を抜けた」「やや熟成した」「熟成した」「酸化熟成のニュアンス」「酸化が進んだ」「完全に酸化している」はワインの熟成度を表す表現で、熟成度が高い順から以下の通りに使用されます。
熟成した > やや熟成した > 若い状態を抜けた > 若々しい
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験において、ほとんどの白ワインにおいて「若々しい」が模範解答として選ばれています。
赤ワインは、「若々しい」「若い状態を抜けた」が模範解答としてよく選ばれています。紫のトーンがはっきりと見えるワインでは「若々しい」、オレンジがかったトーンが見えるワインでは「若い状態を抜けた」が模範解答として選ばれています。
「酸化が進んだ」「完全に酸化している」は、酸化が進みワインが劣化したことを示す表現ですので、試験で使用されることはまずありません。
Robert Mondavi Private Selection Chardonnay
アメリカ、カリフォリニア州のシャルドネです。ロバート・モンダヴィはカリフォルニアワインの父とも呼ばれています。
外観は、イエローの色調で、白のスティルワインとしてはやや色の濃さを感じます。この濃いイエローの色調は、ワインの成熟度の高さを感じさせます。また、グラスを傾けたときのリムにはグリーンのトーンが見えます。このグリーンのトーンは、ワインの若々しさを表します。これらをまとめると、「若々しく」「成熟度の高い」外観であると言えます。
香りは、バナナやパイナップルなどの成熟度を感じるトロピカルフルーツのアロマに、石灰などのミネラル感、そしてバターやクリームなど、香り要素に富みます。アタックは力強く、舌触りはクリーミーです。優しい酸はボリューミーな果実感に包み込まれます。成熟度からくる豊満さをふんだんに感じる一本です。
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