色調(赤)
赤ワインの色調
赤ワインの魅惑的な赤色は、アントシアニンが作り上げています。
アントシアニンは、黒ブドウの果皮に蓄積さており、果皮と一緒に発酵させた際にワインの中に溶け出し特徴的な赤色を発現します。
赤ワインの色の違いは、このアントシアニンの量や条件の違いによって生じます。
それでは、このアントシアニンの量や条件の違いはどのように生じるのでしょうか。
赤ワインの色調の変化
赤ワインの色は、多くのことを物語ります。
酸化熟成の歴史
赤ワインの色は、そのワインがどの程度熟成されたか、つまりどの程度酸素に触れてきたかを物語ります。
若い赤ワインは明るい赤色や紫色を呈しますが、熟成を経るとオレンジや赤レンガ色を呈すようになります。
赤ワインに含まれるアントシアニンは、若いうちは単体(モノマー)として存在しています。このアントシアニンのモノマーはフレッシュな赤や紫色を呈します。アントシアニンは、熟成に伴いアントシアニン同士で結合しあい(重合)、複雑で安定なアントシアニンの重合体を形成します。この重合体により、赤ワインの外観は徐々にオレンジのトーンを帯びてゆくのです。
酸性度
アントシアニンは、溶液中の酸度(=pH)によって色を変えることが知られています。
アントシアニンは、酸性度が強い場合、つまりpHが低い場合には鮮やかな赤色を示しますが、酸性度が弱い場合、つまりpHが高い場合には紫や青色を呈します。これは実際に赤ワイン(pH=3~4)に水(pH=7)を入れてみるとわかります。鮮やかな赤色から青みがかるの変化が見れるはずです。
このため、酸性度の高いピノ・ノワールやサンジョベーゼなどから作られた赤ワインは鮮やかな赤色を呈しますし、酸性度の低いシラーズやマルベックなどから作られた赤ワインは紫がかって見えます。
ちなみにテイスティングする際にはほとんど関係がないのですが、アントシアニンは温度によってもその色を変えます。
このように、アントシアニンが溶液の種々の条件によって色を変化させることを "copigmentation" と呼びます。
その他の要因
赤ワインの色は、その他に品種や醸造方法によっても異なってきます。
ピノ・ノワールやネッビオーロはアントシアニンが少ない品種ですので、それらのから作られるワインは基本的に色が淡く鮮やかなルビー色を呈します。
また、熟成に樽を使った赤ワインは、ステンレスタンクで熟成した赤ワインに比べてオレンジの色がはっきり見えるものが多いです。
これは、樽が酸素を通しやすいため、樽熟成しているワインは酸素と触れ合う機会が多く、熟成がはやく進むからであると考えられます。
色調の表現
ソムリエ・ワインエキスパート試験において、赤ワインの色調を表現する単語として以下が挙げられています。
- 紫がかった
- ルビー
- ガーネット
- オレンジがかった
- 黒みを帯びた
- ラズベリーレッド
- 縁が明るい
- ダークチェリーレッド
- レンガ色
- マホガニー
多いですね。これらの単語を三つのグループに分けて解説します。
「ルビー」「ガーネット」「レンガ色」は、ワインの色調を表すメインの言葉として使用されます。
「ルビー」は、ワインの色が明るく鮮やかに見える際に使用されます。
「ガーネット」は、ワインの色が濃く深く見える際に使用されます。
「レンガ色」「マホガニー」は、全体的にくすんでオレンジがかって見える、熟成がかなり進んだワインに使用されます。「ルビー」「ガーネット」はソムリエ・ワインエキスパートの二次試験で頻繁に使用されますが、「レンガ色」「マホガニー」はほとんど使用されません。
「紫がかった」「黒みを帯びた」「オレンジがかった」「縁が明るい」などのコメントは、ワインの熟成度合いを示す用語として補助的に使用されることが多いです。これらの色は、ワイングラスを傾けた際のリムで確認することが多いです。
「紫がかった」は、ワインが若々しく紫のトーンがよく見える際に使用します。
「黒みを帯びた」は、ワインが若く紫のトーンが見えるが、ワインの色が濃く紫が黒っぽく見える際に使用されます。
「オレンジがかった」は、ワインの酸化熟成が進みワインがオレンジのトーンを帯びている際に使用します。
「縁が明るい」は、さらに酸化熟成が進み色が淡くなっている際に使用されますが、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験に出てくるようなワインには使用されるとは考えづらいです。
「ラズベリーレッド」「ダークチェリーレッド」は、2018年の試験から登場した新しいコメントです。
おおよその傾向としては、「ラズベリーレッド」は「ルビー」と、「ダークチェリーレッド」は「ガーネット」と同じ基準で使用されることが多いです。個人的には「ガーネット」はうっすらとオレンジがかった真紅色を想像しますので、深い紫色が見えた際は「ダークチェリーレッド」を使用するのをおすすめします。
Annabella Napa Valley Cabernet Sauvignon
アメリカ、ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパ・ヴァレーは比較的温暖な生産地で、高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出しています。
外観はかなり濃く、深みを感じさせる紫色の色調です。グラスを傾けた際のリムは淡い紫色で、オレンジのトーンはほとんど見えません。「紫がかった」「ダークチェリーレッド」という表現がぴったりな、若々しく成熟度の高い赤ワインです。
香りは、カシスやブラックベリーのジャムに、甘草やコーヒー、タバコなどの木樽からの風味、そして土や濡れた杉の木などのニュアンスが重なり、深みを感じさせます。アタックは力強く果実感が弾けます。タンニンは力強く、酸味もしっかりと感じられ、果実感と見事に調和しています。力強さを感じつつも繊細さの面影を見せる一本です。
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