濃淡
濃淡とは
濃淡とは、ワインの色の濃さ、つまりワインの色素量を示す指標です。
ワインの色調と並んで、ワインの外観を評価する上で重要な項目です。
ワインの濃淡は、そのワインについての様々な情報を物語ります。
濃淡の差異
ワインの濃淡は、主に品種や成熟度、産地、そして醸造・熟成方法によって変化します。
品種による差異
ワインの色は、ぶどうの品種によって大きく異なります。
これは、そのぶどうが色素を多く含む品種かに依存します。色素を多く含むぶどうから作られたワインは色が濃くなり、逆に色素の少ないぶどうから作られたワインは色が薄くなります。
典型的な例は、ピノ・ノワールです。ピノ・ノワールにはアントシアニンがあまり含まれていないため、ピノ・ノワール種から作られた赤ワインは色が薄く明るいワインになりやすいです。
また、ソーヴィニヨン・ブランやグリューナー・フェルトリーナーからは、色の薄い白ワインが作られることが多いです。
成熟度による差異
ワインの色は、ぶどうの成熟度を図る指標としてもよく使用されます。
一般的に、成熟度の高いぶどうからは色の濃いワインが作られます。
これは様々な理由によるものですが、直感的にわかりやすいのは、成熟度とフェノール類の量の関係です。
ぶどうは成熟するに伴いフェノール類を実や果皮に蓄積します。
このフェノール類はアントシアニンなどの色素も含みますので、一般的に成熟したぶどうほど色の濃いワインが作られると考えられます。
産地による差異
同じ品種でも、低緯度の地域で作られたワインのほうが高緯度の地域で作られたワインより色が濃いことが多いです。この傾向は、特に赤ワインの場合顕著です。
ぶどうに含まれるアントシアニンの量は、太陽の紫外線の影響を強く受けると考えられています。
太陽の日射量が多いほど、紫外線から身を守るためかぶどうの果皮は厚くなり、また果皮に含まれるアントシアニン量も増えることが報告されています。
このため、日射の強い低緯度で作られるワインほど、色が濃くなることが示唆されます。
同様のことは、ぶどう畑の標高差にも言えます。
標高の高いところで栽培されているぶどうは、標高の低いところで栽培されているぶどうよりも果皮が厚いことが多いです。これは、紫外線強度は光度の高い場所ほど強いことが原因として挙げられています。
このため、標高の高い畑からとれたぶどうで作られたワインは色が濃くなる傾向があります。
醸造・熟成方法による差異
ワインの色は、醸造方法によっても大きく異なってきます。
赤ワインはぶどうを果皮や種子ごと漬け込み発酵させます。この果皮や種子を漬け込むマセラシオンの期間が長いほど、つまり果皮とワインが接触している時間が長いほど、果皮からアントシアニンがより抽出されるので、結果としてワインの色が濃くなります。
また、白ワインの場合もスキンコンタクトを行っていればワインの色がやや濃くなる傾向にあります。
また一般的に、樽熟成した白ワインは樽熟成していないものに比べて色が濃くなります。
これは、樽からワインにポリフェノール分が溶け出したり、樽を通じて一定量の酸素が導入されたりすることに起因します。ポリフェノール分が多くなったり、酸素と触れ酸化熟成が進んだりすると、ワインの色は濃く、そしてゴールドへと色調を変化させます。
濃淡の表現
ソムリエ・ワインエキスパート試験において、濃淡を表現する単語として以下が挙げられています。白ワインと赤ワインで使われる単語が若干違うことに注意してください。
- 白ワイン
- 無色に近い
- 淡い
- やや濃い
- 濃い
- 非常に濃い
- 赤ワイン
- 無色に近い
- 明るい
- やや明るい
- やや濃い
- 濃い
- 非常に濃い
白ワインの場合、模範解答としてよく選ばれているのは「淡い」です。
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験で出題されるような若い白ワインの多くは「淡い」色をしています。その他、樽熟成したシャルドネや成熟度の高いリースリングなどでは「やや濃い」という表現も使用されており、また甲州のような色のかなり淡い品種では「無色に近い」が模範解答として挙げられていました。
赤ワインの場合、模範解答としてよく選ばれているのは「やや濃い」「濃い」です。
色素含有量が著しく低いピノ・ノワールやネッビオーロなどの品種を除けば、「やや濃い」と「濃い」が二つとも正解になるパターンが多いです。ピノ・ノワールやネッビオーロなどの品種は、「明るい」「やや明るい」などの表現が使われることが多いです。
Terrazas Reserva Malbec
アルゼンチン、メンドーサ州のマルベックです。マルベックは果皮が厚いことで知られており、マルベックから作られるワインは「黒ワイン」とも呼ばれるほど色の濃いものに仕上がります。
外観は深みを感じ、色調はグラスの奥が見透かせないほど濃いダークチェリーレッドです。濃淡は「濃い」という単語がぴったりです。
香りは、カシスやブルーベリーのジャムに、黒胡椒やクローブのアクセントが際立ちます。すみれの花の香や生肉のようなニュアンスも感じ、野性的で活き活きとした印象を受けます。口に含むとすぐにジューシーな果実感を感じます。力強いタンニンやアルコールのボリューム感がしっかりとしたストラクチャーを作り上げている、スパイシーでパワフルな一本です。