果実の香り(赤)
赤ワインの果実の表現
白ワインの果実のアロマを表す単語は、レモンなどの柑橘類や白桃などの木成りフルーツ、そしてアプリコットなどのトロピカルフルーツなど、多岐にわたりました。
それに対し赤ワインの果実のアロマは、ラズベリーやチェリー、ブルーベリーやカシスなど、一般的に「ベリー」と呼ばれるもののみで表現されます。
しかし一般的に「ベリー」とは、小さい多肉の果物のこと全般を指す曖昧な言葉であり、植物学上同一の科に分類されるものでは有りません。同じ「ベリー」に含まれるもの、例えばラズベリーやブルーベリーは、実は植物学上は全く異なる分類の果実だったりします。
ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリー、チェリー、そしてブラックチェリーはすべてバラ科ですが、ブルーベリーはツツジ科、カシスやグースベリーはユキノシタ科、マルベリーはクワ科に分類されます。
このように、一口にベリーと言っても様々な種類の果実に細分化されるのです。
しかしどのベリーにも共通するのが、「アントシアニン」という鮮やかな赤色を呈する化学物質が含まれているということです。赤ワインから感じられる果実のアロマは、このアントシアニンの質や量に強く相関します。
赤系果実と黒系果実
赤ワインの果実のアロマは、大きく分けて「赤系」果実のアロマと「黒系」果実のアロマに分類されます。
赤系果実のアロマは「ラズベリー」、黒系果実のアロマは「ブラックベリー」などと表現されることが多いです。
この「ラズベリー」と「ブラックベリー」の違いはどこから生まれるのでしょうか。
実は、まだわからない点が多いそうです。
「ラズベリー」や「ブラックベリー」の香りを特徴づけるインパクト化合物は存在しないことが研究の結果わかっています。また、ラズベリーやブラックベリーの香りを分けるエステル類は報告されているものの、これらの量がどのように決まるかの決定的な証拠はまだありません。
しかし、アントシアニンの色素量と赤系-黒系果実の香りは相関していると言われています(因果関係ではないことに注意してください)。
アントシアニン量が少ない明るい赤ワインからはラズベリーなどの赤系果実のアロマを、アントシアニン量が多い色の濃い赤ワインからはブラックベリーなどの黒系果実のアロマを感じることが多いです。
ちなみに、「青系」果実のアロマという表現も使用されたりします。
これは、「赤系」果実のアロマと「黒系」果実のアロマの中間程度に感じられた場合に使用されることが多く、例えば「ブルーベリー」などで表現されます。
赤ワインの成熟度はどう表現する?
白ワインの場合、果実の種類でそのワインの成熟度を暗に表現していました。
では赤ワインの場合はどうでしょうか。
赤ワインの場合、ワインの成熟度は果実の種類(ラズベリーやブラックベリー等)ではなく、その果実の状態で表すことが多いです。状態と言うのは簡単に言うと、その果実をどのように調理していったか、です。
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験では問われないのですが、果実の状態を表す言葉は、そのワインの成熟度が低い順から例えば以下が挙げられます。
- フレッシュ
- クランチ
- コンポート
- ジャム
- リキュール
ご覧いただくとわかるように、徐々に甘さを感じる表現になってゆくのがわかります。
成熟度の低い明るい赤ワインは「フレッシュなラズベリーのアロマ」、成熟度の高い色のやや濃い赤ワインは「カシスのリキュールのようなアロマ」などと表現されます。
赤ワインの果実のアロマの表現
ソムリエ・ワインエキスパート試験において、赤ワインの果実の香りを表現する単語として例えば以下が挙げられています。
- イチゴ
- ラズベリー
- ブルーベリー
- カシス
- ブラックベリー
- ブラックチェリー
これらの果実(ベリー)は、赤ワインの色素量に相関して使用されることが多いです。
つまり、アントシアニンが少ない色の明るいワインには「ラズベリー」、アントシアニンが多い色の濃いワインには「ブラックチェリー」、その中間程度のワインには「ブルーベリー」などの表現が使用されます。
「イチゴ」は、色の明るいワインのうち、香りに甘さを感じた場合に使用されることが多いです。マスカット・ベーリーAやマセラシオン・カルボニックを行ったガメイに使用されることが多いです。
Torcicoda Tormaresca
イタリア、プーリア州のプリミティーヴォです。プリミティーヴォは、「最初の」などの意味を表すラテン語が由来ですが、これはこの品種が他の品種より早熟なことに起因します。
外観は深みを感じさせるダークチェリーレッドで、熟度を感じさせます。グラスに鼻を傾けると、すぐにコンポートしたブラックベリーやブラックチェリーの黒系果実のアロマに気づきます。ナツメグや甘草などのスパイスや、ドライトマトなどの香りも重なり、深みや凝縮感を感じさせます。口当たりは厚みがありながらもジューシーな印象で、チェリーの風味が口の中に広がります。エッジきいた酸は全体をきゅっと引き締め、心地よい余韻を作り上げます。
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