香り

草木の香り(赤)

草木の香りの正体

赤ワインからは、しばしば草木の香りを感じることがあります。これはボルドー地方の赤ワインなどでは顕著ですが、ブルゴーニュのピノ・ノワールなどからはほとんど感じることはありません。

この草木の香りの大部分は、ぶどう由来の「第一アロマ」に分類され、グリーンノートなどと呼ばれることもあります。

この草木の青い香りの正体は、メトキシピラジンという化学物質です。

メトキシピラジン

メトキシピラジンとは、ぶどうにもともと含まれているピーマンのような青臭い香りを放つ化学物質です。

メトキシピラジンは、ぶどうの結実と共に茎や果皮に蓄積されはじめ、ヴェレゾン(色づき期)付近で最大濃度になり、ぶどうの成熟とともにその濃度を下げていきます。

これは、ぶどうの実が成熟する前に鳥などに食べられないように、青臭いメトキシピラジンという鳥などが嫌がる物質を蓄える生体防御のためだと考えると合理的です。

メトキシピラジンの含有量は品種により大きく異なり、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、カルメネールなどの品種で多く見られます。したがってこれらの品種では、メトキシピラジンに由来する青臭い香りがよく感じられることが多いです。

逆に全房発酵(茎はメトキシピラジンを多く含む)をしていないピノ・ノワールなどからは、このような青臭い香りを感じることは少ないです。

メトキシピラジンの量は、ぶどうの成熟度に反比例することが知られています。ぶどうの成熟度が高いと、メトキシピラジンの含有量は少なくなることが知られています。

また成熟度以外にも、ぶどう中のメトキシピラジン量は日射量や気温によっても変化します。日射量が強く、気温の高い地域ほどぶどう中のメトキシピラジン量は少なくなり、グリーンノートが弱くなる傾向にあります。

多くのワインメーカーは、このメトキシピラジンの青臭い香りを多量に含むことを忌避しています。

これは、メトキシピラジンは少量でも香りへの影響力が強く、メトキシピラジンのグリーンノートが強すぎると、他のフローラルな香りなどを隠してしまうからです。メトキシピラジンは、発酵中や熟成中はとても安定しているため、醸造プロセスで取り除くのは難しく栽培や収穫プロセスにおいて最新の注意を払わなければなりません。

またあまり知られていないのですが、メトキシピラジンはてんとう虫によってもたらされる場合もあります。

てんとう虫の体液はメトキシピラジンを含んでいることが知られています。てんとう虫はぶどうの収穫時期頃にぶどうの実に集まり安く、これらを適切に除去しなければワインが青臭い香りで台無しになってしまいます。

実は厄介者、てんとう虫

草木の香りの表現

ソムリエ・ワインエキスパート試験において、赤ワインの草木の香りを表現する単語として以下が挙げられています。

  • 赤ピーマン

どちらもメトキシピラジン由来のグリーンノートを表す単語ですが、使われ方が若干異なります。

赤ピーマン

赤ピーマンは、緑色のピーマンを完熟させたものです。パプリカやカラーピーマンとも呼ばれます。

赤ピーマン

ピーマンの香りのメインの成分は、上で紹介したメトキシピラジンです。赤ピーマンは緑のピーマンに比べて熟しているため青臭い香りが弱いのですが、ワインのテイスティングコメントにはこのくらい主張が少ないくらいがちょうどよいです。

赤ピーマンは、赤系果実の香りを強く感じるワインでグリーンノートを感じた際に使用されることが多いです。シノンのカベルネ・フランや日本のメルローなどでよく使用されます。

杉は、ヒノキ科の針葉樹であり日本の固有種です。春先に花粉をばら撒くネガティブな面が注目されがちですが、建物に使用する木材として古来から使用されていたりする日本人にとても馴染みの深い植物です。

杉の香りはメトキシピラジン由来ではないのですが、日本の固有種とあり日本ではワインの青い香りを表現するのに多用されます。

杉は、仄かな樽香と共にグリーンノートを感じるワインに使用されることが多いです。ボルドーブレンドのワインやチリのカルメネールなどでよく使用されます。

ソムリエ・ワインエキスパート二次試験の赤ワインの香りの項目に、杉と並んで「針葉樹」もあるのですが、杉も立派な針葉樹です。この二つの用語は同じようなワインに使われると思いきや、過去の傾向を見ていると杉と針葉樹は全く異なるワインに使用されています。

おそらくこの針葉樹は英語のCedarから来ており、主にヒマラヤスギの香りを想定しているのではないかと考えられます。紛らわしいですがヒマラヤスギは杉ではなく松の仲間です。

針葉樹は、樽香や第三アロマのウッディーな香りがしっかりと感じられる品種に使用されると考えられますが、分かりづらい用語のため二次試験ではあまり使用しないほうがよいでしょう。

Errazuriz Aconcagua Alto Cabernet Sauvignon

チリ、アコンカグア・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンです。チリのカベルネ・ソーヴィニヨンは、メトキシピラジン由来のグリーンノートが強く感じられます。

外観は濃く、深みを感じさせるダークチェリーレッド。香りは、ブラックベリーなどの熟した黒系果実のアロマに、鼻にすっと通るようなピーマンなどのグリーンノートが感じられます。樽由来の香りと調和して、杉などのニュアンスとしても感じられます。アタックは強く、しっかりとしたタンニンが全体を引き締めます。パワフルでは有りながらストラクチャーがしっかりとした上品なワインです。

エラスリス アコンカグア アルト カベルネ ソーヴィニヨン 2020 エデュアルド チャドウィック チリ アコンカグア ヴァレー

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