苦味
ワインの中の苦味
ワインから強く感じられる味覚のは、主に甘味と酸味です。しかし、ワインからは多かれ少なかれ苦味も感じることができます。
ワインに苦味を与える要素は多岐にわたります。
ワインに含まれるポリフェノールの中には苦味を呈するものが多々あります。代表的なのはタンニンです。タンニンは渋味と同時に苦味も与えることが知られています。
また、アルコールも苦味を与える化合物として知られていますので、アルコール度数が高いと苦味をより強く感じることも知られています。
このように、苦味はポリフェノール量やアルコール度数に比例すると考えられますので、基本的にぶどうの成熟度が上がるとワインの苦味は強くなると考えられています。これは、成熟に伴いぶどうの中にポリフェノールや糖類が多く蓄積されるためです。
苦味を捉える意味
さて、ここでワインの苦味を捉える意義を考えてみましょう。
苦味の項目はなぜこんなに分かりづらいのか
苦味は、ワインの品質を語る上であまり議論に挙がることがありません。というのも、あまりにも苦味の強い場合を除いて、苦味の強弱はワインの品質には大きな影響を及ぼさないと考えられているからです。
世界最大のワイン教育機関であるWSETのテイスティングアプローチには、苦味の項目がありません。
そしてソムリエ・ワインエキスパートの二次試験においては、苦味は白ワインのみ問われます。
しかし赤ワインにも少なからず苦味はありますし、赤ワインには苦味を呈するタンニンが豊富に含まれているため、その苦味の強さは概して白ワインより強いことが普通です。
また、二次試験の苦味のコメントには「旨味を伴った」といった選択肢があります。しかし旨味は苦味とは全く別の味覚です。
これらのことから、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験における苦味の項目が、どのような意図で設けられているのか、少し悩んでしまうかもしれません。
苦味を把握するのは食事とペアリングするため
しかし、ワインと料理と合わせる際、ワインに感じる甘味や酸味以外の味覚もきちんと把握することはとても重要なことです。
概して和食は洋食に比べ酸味や甘味が低く、逆に苦味をしっかりと感じるものが多いです。そのため、ワインに含まれる苦味をしっかり見極めることは、和食とワインをペアリングさせるためには必要な作業なのです。
また、出汁の文化がある我々日本人は旨味を感じやすい国民と言われています。和食の繊細な旨味とワインに含まれる旨味をきちんと調和させるためには、ワインに含まれる旨味をきちんと捉えることも必要なスキルになってきます。
つまり、ワインの苦味、そして旨味をしっかりと感じ取るということは、日本のソムリエになる以上必ず身につけたい能力なのです。
これらの点から、ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験の苦味の項目は、品質の判断というより、どちらかというと料理、特に和食に合わせるために把握すべき甘味や酸味以外の味覚要素と捉えたほうがよさそうです。
苦味の表現
ソムリエ・ワインエキスパート試験において、苦味を表現する単語として以下が挙げられています。渋味は白ワインの場合のみ選択する必要があります。
- 控えめ
- 穏やかな
- コク(深み)を与える
- 旨味を伴った
- 強い(突出した)
ソムリエ・ワインエキスパート試験においては、これらの苦味を表す単語は大雑把に、苦味の強い方から以下のような順序で使用されることが多いです。
コク(深み)を与える > 穏やかな > 控えめ
つまり大雑把な傾向として、苦味の強いワインの場合には「コク(深み)を与える」という表現が使われ、逆に苦味の弱いワインの場合には「控えめ」という表現が使われす。
基本的に成熟度の高いワインほど苦く「コク(深み)を与える」という表現が使用され、成熟度の低いワインほど「控えめ」という表現が使用されます。
「旨味を伴った」は、苦味とともにしっかりとした旨味をも感じられた際に使用します。
甲州などのシュール・リーが行われる品種では、旨味をしっかりと感じるものが多いです。これは、シュール・リー熟成中にオリに含まれている酵母からアミノ酸などが溶出し旨味成分が増えるからと広く考えられていますが、まだ十分に解明されていません。
Grande Polaire 山梨 甲州 (樽発酵) 2018
山梨県の甲州です。このGrande Polaire 甲州樽発酵2018は、シュール・リーを行っていないワインです。甲州は、シュール・リーが行われなくても特徴的な苦味や旨味が感じられる品種です。
外観は、グリーンのトーンがはっきりと出ている無色に近いレモンイエロー。フレッシュさを想起します。香りは、ライムやすだちなどのキレのある柑橘類に、貝殻やヨードなどのミネラル感、そしてカモミールやバニラなどの仄かな甘さも感じます。率直でピュアな印象です。口当たりはライトで、キレのある酸が印象的です。そして後半に感じられる独特の「旨味を伴った」苦味が、全体を端正でドライに仕上げています。
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