渋味
味わい

渋味

渋味とはどのような感覚か

渋味とは何か、どのような感覚か、と問われてきちんと答えられる人は少ないと思います。

渋味は、舌で受容する五基本味に含まれませんし、辛味のような痛覚でもありません。

実は、渋味は触覚に近い感覚であり、口内の唾液と密接に関連しています。

渋味がどのようにして引き起こされるのかを知っていれば、ワインの渋味を捉えるのもずっと簡単になります。

ワインの渋味を引き起こす物質は、タンニンです。

タンニンとは、ぶどうの果皮や種子に多く含まれるフェノール類の一種であり、赤ワインに多く含まれています。タンニンは口の中に入ると唾液と反応し、それが渋いという感覚を引き起こします。

口の中は唾液の粘膜によって覆われており、口の中をあらゆる物質から保護しています。タンニンはその唾液中のタンパク質と反応し、沈殿物を作ります。これによって口の中の粘膜成分はタンニンに吸収され、口の中は滑らかさを失います。

この滑らかさが失われ、口の中が渇いて引き締まるような感覚が渋味と呼ばれる感覚です。タンニンが多く渋味が強い場合は、口の中の渇きが激しく、強い収斂性を感じます。

この点でタンニンは触覚に近い感覚であると言えます。

渋味の感覚と共に、タンニンと唾液中のタンパク質の反応でできた沈殿物が口の中を覆います。その沈殿物の舌触りで渋味の強弱が表現されることも多いです。タンニンが少なく沈殿物も小さく細かい場合は、タンニンの舌触りはサラサラと感じます。

タンニンの量や質は、その触覚という性格上、図のように舌先を内側の歯茎ではさむことで捉えやすくなります。

タンニンの捉え方
タンニンの捉え方

タンニン

渋味はタンニンによって引き起こされる感覚であるということはわかっていただけたと思います。それでは、ぶどうの品種や産地によってタンニンはどのように異なってくるのでしょうか。

ぶどうに含まれるタンニンの量は、品種によって大きく異なります。

カベルネ・ソーヴィニヨンはタンニンを豊富に含む品種であるのに対して、ピノ・ノワールはタンニンをあまり含まない品種です。どの品種がタンニンが少なく、どの品種がタンニンが多いかを覚えておくのはテイスティングを行う上で重要です。

タンニンと渋味と品種差
タンニンと渋味と品種差

また、ぶどう中のタンニンの蓄積や成熟の速度は、気候の影響をほとんど受けないことが知られています。そのため同じ品種で考えた際、タンニンは緯度の差によって顕著な違いは出ないと考えられます。

しかし渋味は、酸が多いと強く感じ、逆にアルコール度数が高いと弱く感じることが知られています。

同じ品種で考えた際、酸が多くアルコール度数が低い低緯度で作られたワインのほうが、酸が少なくアルコール度数が高い高緯度で作られたワインよりタンニンをやや強く感じてしまう傾向にあります。テ

イスティングを行う際は、他の味覚要素に起因する渋味の感覚差をきちんと把握し、タンニンの量を捉え地が得ないようにすることが重要になってきます。

白ワインは、基本的に果皮や種子を使わず、タンニンをあまり含まない果汁のみで発酵が行われるためタンニンは少なく、従って渋味もほとんど感じません。

渋味の表現

ソムリエ・ワインエキスパート試験において、渋みを表現する単語として以下が挙げられています。渋味は赤ワインの場合のみ選択する必要があります。

  • 収斂性のある
  • 力強い
  • 緻密
  • サラサラとした
  • ヴィロードのような
  • シルキーな
  • 溶け込んだ

ソムリエ・ワインエキスパート試験においては、これらの渋味を表す単語は大雑把に、渋味の強い方から以下のような順序で使用されることが多いです。

 収斂性のある > 力強い > 緻密 > サラサラとした

つまり大雑把な傾向として、渋味の強い、つまりタンニンの豊富なワインの場合には「収斂性のある」という表現が使われ、逆に 渋味の弱い、つまりタンニンが少ないワインの場合には「サラサラとした」という表現が使われす。

「ヴィロードのような」「シルキーな」「溶け込んだ」などの表現はタンニンの質を表す表現です。

「ヴィロードのような」「シルキーな」という表現は、タンニンが主張しすぎず、舌触りがよく、エレガントに感じられる際に使用されます。ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験で出てくる価格帯のワインではあまり使用しないかもしれません。

また「溶け込んだ」は、タンニンの量がかなり少なく渇いた感覚が感じられない、つまり沈殿物がほとんど作られずタンニンが唾液に溶け込んでいるように感じるときに使用します。タンニンの少ないガメイなどの品種で使われたりします。

Roberto Sarotto Barbaresco Riserva

イタリア、ピエモンテ州のバルバレスコです。ネッビオーロは収斂性のあるタンニンが特徴的です。

淡いレンガ色の外観はきらめく溶岩を連想させます。香りは、ラズベリージャムやいちじく、バニラ、なめし革、そしてきのこなどと、深みのある複雑な印象。ポテンシャルを感じます。アタックはなめらかながらも、果実感や酸味もしたたかに感じられます。しかし、やはり際立つのがタンニンです。舌の上でワインを転がすと、タンニンに水分が吸われて渇いてゆく感覚、舌がぎゅっと引き締められるような感覚がよく分かると思います。このような強い渋味を「収斂性のある」と表現します。

ロベルト サロット バルバレスコ リゼルヴァ 赤ワイン ネッビオーロ イタリア 750ml

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